魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
しばらくマッサージを続けていると、リロイの筋肉質だけれどしなやかな背筋が解れてきたのがわかった。

それと同時に男性の身体をこんなに触ったことがなく、急に恥ずかしくなったティアラはリロイの背中からそろそろと降りてソファーに座り直してもじもじしてしまった。


「途中意識が飛びそうになる位気持ちよかったです。ありがとう、ティアラ」


「い、いえ…私こそ…その…べたべた触ってすみませんでした」


「よければ人体のつぼとか教えて下さい。今後役に立ちそうだし、僕も勉強してみたい」


「はい。実は今持ってるんです。バッグに入れてあるからちょっと待っていて下さい」


…リロイと一緒に居ると、ついつい王女としての自身の立場を忘れてしまう。

それは一緒に居て楽しいという意味で、リロイが起き上がってソファーに座ると優しい眼差しで見つめてきたので、どきどきして動揺してしまったティアラは急いで立ち上がろうとして毛の長いカーペットに脚を取られてつまづいた。


「きゃっ」


「!危ない!」


リロイに向かってつんのめった身体を抱きしめて受け止めてくれた。

心臓がうるさいくらい音を立てて、何も考えられなくなって、時間が…止まった気がした。


「ご、ごめんなさい…」


「いえ…。あなたの身体…ふわふわだ。やわらかくて、いい匂いがします」


「そ、そうですか?あの…ローズマリーさんに分けてもらったバラのオイルをシャワーを浴びた後に使っているからだと思います。すごくいい香りがするんです」


「そうか、そういえばラスからも同じ香りがした気がします。どこも怪我していませんか?」


――リロイもティアラも離れ難く、結果ティアラはリロイの膝の上に抱かれている格好になっていた。

手を添えたリロイの肩はたくましくて、すぐ傍でリロイの吐息が聴こえて顔を上げると、鼻と鼻がこすれ合ってキスする寸前の距離になっていたことに気が付いた。


「り、リロイ…?」


「…僕はまだあなたの恋愛対象ですか?」


「…!…どうしてそんなこと…聴くの…?」


「僕にも…よくわかりません。だけどあなたと離れたくなくて…」


「リロイ…!」


恐る恐る――唇が触れ合った。

まるで罪を犯している気分になって、背徳感に燃え上がって、キスはすぐに激しいものに変わった。
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