魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
どうせ知ってはいたけれど…


コハクの頭の中はラスのことだけ。

知ってはいたけれど、実際現実を眼前に叩き付けられると、何も感じなくなるのだとわかった。


「何か起こるかもって…何も考えずに自分に不死の術をかけたっていうのか?」


「そうよ、だから何?成功したんだからいいじゃない」


投げやりに返して膝から降りると腕を強く掴まれて振り返った。

コハクは少し怖い顔をして、また強く腕を掴んできた。


「お師匠は成功したけど、俺はどうなんだよ。失敗したら…チビに何か起こるんじゃないのか?そうなったら俺…」


途方に暮れた表情でうなだれたコハクは…今、素の状態。

頼ってくれたことは嬉しいし、こうして2人で会えることも嬉しかったけれど、話の内容はちっとも楽しいものではない。


「それで地下室で何か探してたってわけ?あなたの考えそうなことなんてお見通しなのよ」


コハクが一瞬空を見上げた。

いや…空ではなく、ラスの居る部屋を見上げた。


よく出た男らしい喉仏が何度か動いてそれに見惚れていると、コハクは立ち上がって、息を呑む一言を放った。



「俺が失敗した時のために、死ねる方法を探してたんだ」


「…え?」


「失敗してチビに何か起きた時…失敗してチビに何も起きなかった時…俺はもう生きていたくない。人生は十分楽しんだし、チビに置いて逝かれたくないんだ」



――強い決意だった。

必死になって死ねる方法を探していたとは思いもしなかったので二の句が継げずにいると、シリアスな空気を良しとしないコハクはにかっと笑って肩を叩いて部屋の中へ戻った。


「いくら俺が超天才でも失敗した時のことは考えんだよ。もうちょっと色々調べてみる。聴いてもらってちょっとすっきりした。サンキュな」


…ラスの元へ戻ろうと身を翻して部屋から出て行こうとするコハクの腕を掴んで振り向かせた。

完全に無防備だったコハクは驚いた顔をして見下ろして来ると、ローズマリーはコハクのシャツを引っ張って顔を下げさせて…突然唇を奪った。


「んむ…!?」


「…行かないで」


か細い声で告げて、ぎゅうっと抱き着いた。
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