魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「あれからもう2年も経ったんだな」
ラスのライングラスにワインを注いでやり、かちんとグラスを1度合わせるとラスが小さく微笑んだ。
…美しくなった。
2年ものの歳月、コハクのことだけを想い、永遠の恋をし続けたままのラスは今やこの世界で1番美しい女と言ってもいいだろう。
あどけなかった表情は少し残ったままだが大人の女性になり、誰もが見惚れる美貌は今となっては…ほとんど微笑むこともない。
あんなによく笑う子だったのに。
時々笑顔は見せてくれるが、笑い声はこの2年間…聴いたことはない。
「いつも気遣ってくれてありがとう。グラース…私の傍に居なくてもいいのに」
「…いや、魔王からお前を託された。あいつは…何か悟っていたのかもしれないな、こうなることを」
「…コーはいっつも私のことばっかり考えててくれたから」
ワインを口にして甘い息を吐くとバルコニーに向かい、月の光を浴びるラスは神々しくも儚く見えた。
そのまま飛び降りてしまうのではないかという危機感を持ちつつグラースも隣に立つと、そんな意図を読み取ったのかラスは小さく首を振った。
「死んだりしないよ。ねえグラース…私は諦めてないの。コーは生きてるかもしれないでしょ?今私が死んだら…コーと会えなくなっちゃうから死なないよ」
「…ラス…」
あの血の量――明らかに命を失う量だったが…
これ以上ラスを悲しませることはしたくない。
だからグラースは同意もせず否定もせず、ラスと同じように月を見上げた。
「今もどこかで見守っててくれてる気がするの。おかしい?」
「おかしくない。あいつはお前のストーカーだったから絶対どこかから見ているぞ」
「ふふっ、うん。ね、月が綺麗だね。コー…どこに居るのかな…」
――そう呟いて月の光を浴びるラスを向かい側の塔から熱い視線で見守る男の姿が在った。
「ラス…」
リロイだ。
この2年…まともに顔も合わせず、まともに会話も交わしていない。
リロイもまたラスへの恋に焦がれ、一際美しい男になっていた。
触れたい。
話したい。
想いは、叶わないまま。
ラスのライングラスにワインを注いでやり、かちんとグラスを1度合わせるとラスが小さく微笑んだ。
…美しくなった。
2年ものの歳月、コハクのことだけを想い、永遠の恋をし続けたままのラスは今やこの世界で1番美しい女と言ってもいいだろう。
あどけなかった表情は少し残ったままだが大人の女性になり、誰もが見惚れる美貌は今となっては…ほとんど微笑むこともない。
あんなによく笑う子だったのに。
時々笑顔は見せてくれるが、笑い声はこの2年間…聴いたことはない。
「いつも気遣ってくれてありがとう。グラース…私の傍に居なくてもいいのに」
「…いや、魔王からお前を託された。あいつは…何か悟っていたのかもしれないな、こうなることを」
「…コーはいっつも私のことばっかり考えててくれたから」
ワインを口にして甘い息を吐くとバルコニーに向かい、月の光を浴びるラスは神々しくも儚く見えた。
そのまま飛び降りてしまうのではないかという危機感を持ちつつグラースも隣に立つと、そんな意図を読み取ったのかラスは小さく首を振った。
「死んだりしないよ。ねえグラース…私は諦めてないの。コーは生きてるかもしれないでしょ?今私が死んだら…コーと会えなくなっちゃうから死なないよ」
「…ラス…」
あの血の量――明らかに命を失う量だったが…
これ以上ラスを悲しませることはしたくない。
だからグラースは同意もせず否定もせず、ラスと同じように月を見上げた。
「今もどこかで見守っててくれてる気がするの。おかしい?」
「おかしくない。あいつはお前のストーカーだったから絶対どこかから見ているぞ」
「ふふっ、うん。ね、月が綺麗だね。コー…どこに居るのかな…」
――そう呟いて月の光を浴びるラスを向かい側の塔から熱い視線で見守る男の姿が在った。
「ラス…」
リロイだ。
この2年…まともに顔も合わせず、まともに会話も交わしていない。
リロイもまたラスへの恋に焦がれ、一際美しい男になっていた。
触れたい。
話したい。
想いは、叶わないまま。