魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
むにゃむにゃと口を動かして幸せそうに眠っているラスの寝顔をじっと観察しているうちに、身体が勝手に動いてラスに顔を近付けた。


“口から下のキスは駄目!”とコハクから強く言われたことが頭をよぎったが、“駄目”と言われると余計にしてみたくなって、ベンチでコハクがラスと唇と唇をくっつけてキスをしているのを思い出した。


…なんだかあれは気持ちよさそうで、ラスもとろんとしていた。

してみたい。

絶対怒られるだろうけれど、怒られてもしてみたい――


「………ラス」


呼びかけても起きる気配はなく、指でラスの唇を押してみると、身体と同じようにとてもやわらかくて…


完全に誘惑に負けてしまったデスは、ラスの唇に唇を押し付けた。


「……ん…」


「…………やわらか…い…」


ちゅっちゅと何度も唇を押し付けているうちにキスをしているのをコハクと勘違いしたのか、ラスが首に腕を回してきて夢現に耳元でこそりと呟いた。


「コー…もっとして…」


「………」


…たかが外れた。

何かのスイッチが入ったかのように、舌をねじ込んで絡めて、それは想像以上に気持ち良くて…


コハクの真似をしただけなのに、ラスは夢心地で何の抵抗もせずに唇を半開きにして受け入れていた。


「ん…コー……、好き…」


「………俺も……好き…」


だが途端に罪悪感が生まれた。


ラスが呼んでいる名は…自分の名ではない。


ラスは自分を受け入れてくれたのではない。

コハクを受け入れているのだ。


「………」


「コー…終わり…?」


躊躇しているとラスから舌を絡めてきたので、もうそれからはまた夢中になってキスをしているうちに腕が勝手にラスを抱き寄せて身体が勝手にラスに覆い被さって、胸にラスの胸のやわらかい感触が伝わってきて、また身体が暴れ出した。



「コー…、一緒寝よ…。抱っこして…」


「………俺…魔王じゃない…」


「コー……むにゃ…」


「……魔王じゃない…」



――だんだん虚しくなってきた。

やってはいけないことをしているし、身体はまた変になるし、ラスは自分のことをコハクと思っているし…


いいことなんて、何ひとつとしてない。


「……」


身体を起こしてラスから離れた。


ベッドに行って、布団を頭に被ってラスを見つめた。
< 505 / 728 >

この作品をシェア

pagetop