魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ヒキガエルはいつもあまり一緒に居てくれない。

だが一人っ子で元々ひとり遊びの得意なラスは相変わらずのポジティブシンキングでもってコハクに再会したら何を言おう、とか今までの状況を頭の中でまとめてシミュレートしていた。


「ティアラのくれた石で燕さんの怪我も少し良くなったみたいだし早く飛べるようになるといいなあ」


陽も落ちてきて、そろそろ夕食の準備でもしようとキッチンに立とうとした時――


コンコン。


ドアがノックされたのでラスの首が思いきり傾いた。

ヒキガエルからは“ドアを開けてはいけない”と言われている。

それにもう夜も近いし、ヒキガエルの言いつけを守るために最初は無視していたのだが…


ドンドン!


…今度は強くドアが叩かれ、その激しさに少しだけ怖くなったラスは恐る恐る返事をした。


「はい、だあれ?」


「俺だよお嬢さん。ヒキガエルだよ、ここを開けておくれ」


…ヒキガエルは語尾に“ケロ”と言うし、口調も違うので後ずさりしながら首を振った。


「ヒキガエルさんはそんな声じゃないもん」


「ああ、今のはお嬢さんをからかったんだケロ。ここを開けておくれ、一緒に夕飯を食べようケロ」


語尾に“ケロ”はついたが明らかに不自然で、ベッドに上がると窓際からそっとドアの方を見ると、そこには土まみれの大きなモグラが立っていた。


「ヒキガエルさんじゃない…どうしよう…どうしたら……あっ」


視線を感じたモグラと目が合ってしまい、モグラの瞳が真っ赤に光った。

コハクのものとは違う不気味な赤で、ラスがさっと顔を隠すと正体を知られたモグラが…家を揺らし始めた。


「きゃあっ!」


ものすごい力でぐらぐら揺れ、家具が落下して大きな音を立て、ラスも立っていられなくなってベッドにしがみついた。


「どうしよう、自分でなんとかしなきゃ…どうしよう…!」


「やあ人間のお嬢さん。どうだろう、土の中へ遊びに来ないかい?」


室内に侵入され、手を差し伸べて来る。


「ヒキガエルさんからここから離れちゃいけないって言われてるから…ごめんね」


――断るとモグラの長い鼻がぴくぴく動き…ラスににじり寄った。
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