魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
フォーンがたらふく酒を飲まされて眠る過程までをコハクは部屋で爆笑しながらデスと一緒に見ていたのだが、ラスは途中からすやすや眠っていて、ラスを起こすのに時間がかかってタイミングよく現れることができるか心配だったが…大成功だ。


リロイとティアラにはフォーンにどんな罠を仕掛けたか伝えていなかったが、どうやらリロイは察したらしく、ティアラのフォーンへの嫌悪も本物。

ラスほどではないがティアラもなかなか綺麗な顔立ちをしているので、今後ますます態度を硬化させるティアラにてこずることも間違いない。


「後はー、小僧をどうやって立候補させるかだな」


「クリスタルパレスの王様にすればティアラと結婚できるんだよね?私も説得頑張るっ」


フォーンを除いた皆で朝食を摂っている間にラスはコハクの膝の上でひそひそ話をしながらティアラと談笑しているリロイをチラ見していた。

…明らかに昨日とは空気も雰囲気も違う。


一口サイズにちぎったパンを口に入れてもらいながらも観察に夢中になっているラスの口元に今度は紅茶を持って行ってやったコハクは、横からそーっと手を伸ばして自分の分のパンを横取りしようとしたデスの手をばしっと叩いてラスの頬をぺろぺろと舐めた。


「口コミってのはすげえ威力なんだぜ。さっき“言いふらしてやる”って言ってたろ?あいつら今日はクリスタルパレスにボランティアに行くって言ってたから…ふふふー、すげえ勢いでチビハゲエロ王子の噂が広がるんだろうなー」


「…うん」


「?チビ…どした?」


笑顔が消えて黙り込んでしまったラスに不安を覚えたコハクが頬を撫でて問うと、ラスはコハクの首に腕を回して抱き着きながらこそっと耳元で囁いた。



「さっきの綺麗な女の人たちはコーのお友達なの?お友達ならいいけど…お友達以上は駄目だよ。浮気したら旦那さんもパパも要らないんだから」


「!!!しません!絶対しません!!チビだけだって。そんでもってチビ一筋の俺を疑ったな?こうしてやる!」


「きゃーっ!くすぐったい!」



わき腹をこちょこちょくすぐってじたばたしながら笑い声を上げたラスにほっとしたコハクは、そのほっとした顔を真向かいに座っていたグラースに見られてやや赤面。


「…なんだよこっち見んな!」


「いや、私は隣の死神を見ていただけだ」


デス、ぞくっ。
< 514 / 728 >

この作品をシェア

pagetop