魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ティアラがコーヒーと紅茶を淹れて執務室に戻って来た時――ちょうどフォーンが息を切らしながらリロイを睨んでいた場面に遭遇してしまった。
振り返ったフォーンは埃まみれだし、ただでさえ少ない髪はぼさぼさで、嫌悪感を隠さないティアラはフォーンの横を素通りしてテーブルに飲み物を置いた。
「ティアラ王女…私に昨晩の言い訳をさせて下さい」
「別に必要ありません。私とあなたは結婚する身ですが、私はあなたと夜を共にしないと決めました」
「…え?ティアラ王女…何を…」
「形式的には結婚はしますが、夫婦としての関係は無い。だからあなたはどんな女性とでも遊んでいいんですよ。ただし、レッドストーン王国の権威だけは貶めないで下さいね」
にっこりと作り笑顔を浮かべて毒づいたティアラがかっこよすぎて、ラスはコハクとデスの口にクッキーをねじ込みながら全開の笑顔でにこにこしていた。
「そ、そんな…。それでは私とあなたの間に子供が出来ない…」
「いいんですよそれで。私は元々神に全てを捧げるつもりでしたから結婚は望んでいませんでした。リロイ、コーヒーをどうぞ」
「ありがとうございます」
…著しくプライドを傷つけられたフォーンはわなわなと拳を震わせて、腰に下げたおもちゃのような剣の鞘に手を伸ばした。
が、それよりも早く反応したのはリロイで、瞬きをした瞬間には椅子から立ち上がってティアラを背中に庇い、すでに鞘から剣を抜いて構えていた。
「フォーン王子…その剣で何をなさるおつもりですか?」
「あ…、い、いや、これは…」
「ティアラに剣を向けようとしましたね?…どの国においても女性は宝物。誇り高き白騎士としてあなたの行為を僕は見過ごすことができませんよ」
「…勇者様…っ!」
――ラスが瞳を輝かせてリロイに向かってそう呟いたので、焦ったコハクは人差し指と親指で何かを弾くような仕草をしてみせると、剣を固定していたベルトがちぎれて音を立てて床に落ちた。
その隙をついてリロイが目にも止まらぬ速さでフォーンの喉元に刀身を押し当てた途端、フォーンは確かな命の危機を感じて震え出した。
「わ、私は…」
「どうかご退出を」
「わ、わかった」
リロイの“何か”に炎が燈った。
振り返ったフォーンは埃まみれだし、ただでさえ少ない髪はぼさぼさで、嫌悪感を隠さないティアラはフォーンの横を素通りしてテーブルに飲み物を置いた。
「ティアラ王女…私に昨晩の言い訳をさせて下さい」
「別に必要ありません。私とあなたは結婚する身ですが、私はあなたと夜を共にしないと決めました」
「…え?ティアラ王女…何を…」
「形式的には結婚はしますが、夫婦としての関係は無い。だからあなたはどんな女性とでも遊んでいいんですよ。ただし、レッドストーン王国の権威だけは貶めないで下さいね」
にっこりと作り笑顔を浮かべて毒づいたティアラがかっこよすぎて、ラスはコハクとデスの口にクッキーをねじ込みながら全開の笑顔でにこにこしていた。
「そ、そんな…。それでは私とあなたの間に子供が出来ない…」
「いいんですよそれで。私は元々神に全てを捧げるつもりでしたから結婚は望んでいませんでした。リロイ、コーヒーをどうぞ」
「ありがとうございます」
…著しくプライドを傷つけられたフォーンはわなわなと拳を震わせて、腰に下げたおもちゃのような剣の鞘に手を伸ばした。
が、それよりも早く反応したのはリロイで、瞬きをした瞬間には椅子から立ち上がってティアラを背中に庇い、すでに鞘から剣を抜いて構えていた。
「フォーン王子…その剣で何をなさるおつもりですか?」
「あ…、い、いや、これは…」
「ティアラに剣を向けようとしましたね?…どの国においても女性は宝物。誇り高き白騎士としてあなたの行為を僕は見過ごすことができませんよ」
「…勇者様…っ!」
――ラスが瞳を輝かせてリロイに向かってそう呟いたので、焦ったコハクは人差し指と親指で何かを弾くような仕草をしてみせると、剣を固定していたベルトがちぎれて音を立てて床に落ちた。
その隙をついてリロイが目にも止まらぬ速さでフォーンの喉元に刀身を押し当てた途端、フォーンは確かな命の危機を感じて震え出した。
「わ、私は…」
「どうかご退出を」
「わ、わかった」
リロイの“何か”に炎が燈った。