魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
…冷えた瞳をしていた。
ラスが怖がってコハクのシャツの袖を握って離さないほどの静謐さを身に湛えたリロイは、しゃらんという鞘鳴りの音と共に刀身を収めると、ゆっくりと息を吐いた。
「あの…リロイ…」
「…大丈夫ですか?女性に剣を向けるなんて…いくら王族でも許されないことです」
「私は…大丈夫。あなたの方こそ大丈夫ですか?ラスが怖がってるわ」
はっとなったリロイは首を竦めてこちらの様子を窺っているラスを見た途端、すぐさまラスの足元で片膝をついて小さな手を握り締めた。
「ラス…ごめん。怖かったよね」
「ううん…。リロイ…頑張ってね。私、応援してるから」
「ん。怖がらせてごめん。ちょっと息抜きに外に出て来るからラスはここから動いちゃ駄目だよ。お腹に赤ちゃんが居るんだから」
「うん、わかった」
ようやくラスの顔に笑顔が戻ると、リロイは純白のマントを翻して部屋を出て行き、コハクは欠伸をしながらティアラに向かってドアを顎で指した。
「行って来いよ。あいつ、チビハゲエロ王子を殺しに行くかもな」
「!そ、それは駄目!王族殺しは極刑よ…!」
ティアラが急いでリロイを追いかけた後、ラスはまたコハクのシャツを引っ張って唇を尖らせた。
「コー、変なこと言っちゃ駄目だよ」
「や、だってあいつの顔さあ、俺を刺した時と同じ顔してたし。意外とマジなのかもだぜ」
「リロイ…死んじゃうの?駄目だよ、リロイがおじいちゃんになるまでずっと一緒なんだからっ」
――コハクはローズマリーに相談した悩みを思い浮かべた。
不死の魔法が失敗すれば…ラスと同じ時を生きてゆけなくなる。
今までは失敗するイメージなどなかったが、いざその日が近付くと…何故かとても不安になって、言いきれぬ恐怖が繰り返し押し寄せてくる。
「コー?どうしたの?私が怒ったから怒ったの?」
心配そうに見上げて来るラスに笑顔を向けたコハクは、頭を引き寄せてちゅっとキスをすると、ソファーにふんぞり返った。
「チビはさあ、ずっと俺と一緒だよな?」
「?うん、そうだよ。ずーっと一緒だよ」
「俺を…信じてくれるよな?」
「うん。コーは時々わかんないこと言うけど、信じてるよ」
デスが小さく笑った。
ラスも小さく笑った。
コハクは泣き笑いを浮かべた。
ラスが怖がってコハクのシャツの袖を握って離さないほどの静謐さを身に湛えたリロイは、しゃらんという鞘鳴りの音と共に刀身を収めると、ゆっくりと息を吐いた。
「あの…リロイ…」
「…大丈夫ですか?女性に剣を向けるなんて…いくら王族でも許されないことです」
「私は…大丈夫。あなたの方こそ大丈夫ですか?ラスが怖がってるわ」
はっとなったリロイは首を竦めてこちらの様子を窺っているラスを見た途端、すぐさまラスの足元で片膝をついて小さな手を握り締めた。
「ラス…ごめん。怖かったよね」
「ううん…。リロイ…頑張ってね。私、応援してるから」
「ん。怖がらせてごめん。ちょっと息抜きに外に出て来るからラスはここから動いちゃ駄目だよ。お腹に赤ちゃんが居るんだから」
「うん、わかった」
ようやくラスの顔に笑顔が戻ると、リロイは純白のマントを翻して部屋を出て行き、コハクは欠伸をしながらティアラに向かってドアを顎で指した。
「行って来いよ。あいつ、チビハゲエロ王子を殺しに行くかもな」
「!そ、それは駄目!王族殺しは極刑よ…!」
ティアラが急いでリロイを追いかけた後、ラスはまたコハクのシャツを引っ張って唇を尖らせた。
「コー、変なこと言っちゃ駄目だよ」
「や、だってあいつの顔さあ、俺を刺した時と同じ顔してたし。意外とマジなのかもだぜ」
「リロイ…死んじゃうの?駄目だよ、リロイがおじいちゃんになるまでずっと一緒なんだからっ」
――コハクはローズマリーに相談した悩みを思い浮かべた。
不死の魔法が失敗すれば…ラスと同じ時を生きてゆけなくなる。
今までは失敗するイメージなどなかったが、いざその日が近付くと…何故かとても不安になって、言いきれぬ恐怖が繰り返し押し寄せてくる。
「コー?どうしたの?私が怒ったから怒ったの?」
心配そうに見上げて来るラスに笑顔を向けたコハクは、頭を引き寄せてちゅっとキスをすると、ソファーにふんぞり返った。
「チビはさあ、ずっと俺と一緒だよな?」
「?うん、そうだよ。ずーっと一緒だよ」
「俺を…信じてくれるよな?」
「うん。コーは時々わかんないこと言うけど、信じてるよ」
デスが小さく笑った。
ラスも小さく笑った。
コハクは泣き笑いを浮かべた。