魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ドラちゃんが強風を巻き起こしながら頭上を飛んでグリーンリバーへ向かったのを見たリロイは、やはりフォーンのことが気になってひよこと戯れているティアラに手を差し伸べた。
「僕たちも戻りましょう。もうこの街は僕たちが居なくても稼働していますから」
「はい」
返事をしてリロイの手を取った時、住民の中で最も発言力のある1人である医師の男がリロイの隣を歩きながら1枚の紙を見せた。
「リロイさん、これを」
「これは…なんですか?」
「来週行われる選挙の立候補者のリストです。代表者が決まった後、議会を設ける予定です。リロイさん…あなたが立候補すればみんな辞退しますよ。あなたが立候補しないから、このリストに乗ってる立候補者は仕方なく名乗りを挙げているんです」
「そんな…僕には無理ですよ。この街の礎はあなたたちだ。僕や王家の方々はその手伝いをしただけですから」
「いや、あなたしか居ない。これ、立候補の時に必要な書類です。持っていて下さい」
無理矢理胸に押し付けられた紙を困り果てた顔で見下ろしていたリロイは、あちこちから起こった拍手にまた戸惑って立ち止まった。
「リロイ…いい話だと思いますよ。この街は街にしては大きすぎます。あなたのように人々に目を配ることができて、かつ迅速に対処できる人が治めないと、すぐに自治は崩壊します」
「僕はただの平民の生まれで、政治の知識もありません。気持ちは嬉しいですが……行きましょう」
大広場にはケルベロスが待機していて、相変わらずコハクとラスが居ないと無口な魔犬は背に乗り込んだのを確認すると大地を力強く蹴って空中に躍り出た。
コハクとラスからも説得されたけれど、自信が無い。
王族の警護と戦うことしかしてこなかったから、人々の期待に応えられる自信が無い。
だけど…
この街の代表者になれれば、発言力が手に入る。
対等とまではいかないけれど、フォーンに対して強い姿勢で意見を述べることができるようになる。
「…守ってあげたい」
「え?今何か言いましたか?」
強風のせいでリロイにしがみ付くのに必死なティアラが聞き返してきたが、リロイは肩越しに振り返って笑顔を浮かべた。
「なんでもありません」
笑い返してきたティアラがとても愛しくて、もう気持ちに嘘がつけなくなりそうになっていた。
「僕たちも戻りましょう。もうこの街は僕たちが居なくても稼働していますから」
「はい」
返事をしてリロイの手を取った時、住民の中で最も発言力のある1人である医師の男がリロイの隣を歩きながら1枚の紙を見せた。
「リロイさん、これを」
「これは…なんですか?」
「来週行われる選挙の立候補者のリストです。代表者が決まった後、議会を設ける予定です。リロイさん…あなたが立候補すればみんな辞退しますよ。あなたが立候補しないから、このリストに乗ってる立候補者は仕方なく名乗りを挙げているんです」
「そんな…僕には無理ですよ。この街の礎はあなたたちだ。僕や王家の方々はその手伝いをしただけですから」
「いや、あなたしか居ない。これ、立候補の時に必要な書類です。持っていて下さい」
無理矢理胸に押し付けられた紙を困り果てた顔で見下ろしていたリロイは、あちこちから起こった拍手にまた戸惑って立ち止まった。
「リロイ…いい話だと思いますよ。この街は街にしては大きすぎます。あなたのように人々に目を配ることができて、かつ迅速に対処できる人が治めないと、すぐに自治は崩壊します」
「僕はただの平民の生まれで、政治の知識もありません。気持ちは嬉しいですが……行きましょう」
大広場にはケルベロスが待機していて、相変わらずコハクとラスが居ないと無口な魔犬は背に乗り込んだのを確認すると大地を力強く蹴って空中に躍り出た。
コハクとラスからも説得されたけれど、自信が無い。
王族の警護と戦うことしかしてこなかったから、人々の期待に応えられる自信が無い。
だけど…
この街の代表者になれれば、発言力が手に入る。
対等とまではいかないけれど、フォーンに対して強い姿勢で意見を述べることができるようになる。
「…守ってあげたい」
「え?今何か言いましたか?」
強風のせいでリロイにしがみ付くのに必死なティアラが聞き返してきたが、リロイは肩越しに振り返って笑顔を浮かべた。
「なんでもありません」
笑い返してきたティアラがとても愛しくて、もう気持ちに嘘がつけなくなりそうになっていた。