魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
グリーンリバーに戻るなり地下室に籠もってしまったコハクのためにせっせとクッキーを焼いていたラスは、ひと段落つくと膝を抱えて椅子に座って置き物のように動かなくなっていたデスの手を引っ張って上階を指した。


「クッキーが焼けるまでちょっと時間あるし…あの王子様を捜しに行かない?」


「…………どうして…?」


「わかんないけど…何かしそうじゃなかった?リロイたちのことが心配だし…」


「……………わかった」


しっかりローブを着こんだデスの手を引いてフォーンの部屋を訪ねたが、人の気配が無い。

ここにもクリスタルパレスにも知り合いは居ないはずだが…

ますます心配になったが、ドアの前でフォーンを待つのも時間がもったいないのでキッチンに戻ろうと螺旋階段をデスと一緒に降りていた時、下からフォーンが上がってきた。


「おお、ラス王女!あの男は…一緒ではないのですね」


「コーのこと?今地下室でお勉強してるの。あの…どこに行ってたの?」


頭のてっぺんがハゲた王子は口ひげを撫でてにやりと笑った。

その笑い方がいやらしくて、しかもラスに向かって手を伸ばそうとしたので、コハクの代わりにラスを任されていたデスはラスをさっと抱っこしてその手からラスを引き離した。


「…………触るな」


「!こ、これは失礼…。いやなに、ちょっと手紙屋の所へ行っていただけです。重要な手紙を出しにね」


手紙屋とは、専用の鳥を飛ばして各地に手紙を届けるシステムだ。

陸路の方法もあるが、中央に走るライナー山脈のせいでとてつもない時間がかかるので、少々値は張るが空路からの方法もある。

フォーンの口調が明らかに何かを言い含んだ感じだったのでラスが身を乗り出して問おうとするのを階段を降りることで止めたデスは、ラスに怒られた。


「もうっ、どこにどんな手紙を出したか聴きたかったのにっ」


「………ラスには…関係ない…」


「関係なくなんかないよ、絶対リロイとティアラが関わってるはずなんだから」


「……身体のことだけ…考えて…」


垂れた目元を緩めて小さく微笑んだデスの笑顔に負けたラスは、デスの頬にちゅっとキスをして、お返しにキスをもらった。


「うん、わかった。でもコーには報告しようね」


…フォーンの高笑いが聴こえた気がした。
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