魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
とても美味しそうな匂いがした。
眠りつつも反射的にくんくん鼻を鳴らしたラスは、カートの音と紅茶の香りと香ばしいパンの匂いに操り人形のようにゆらりと身体を起こして目を擦った。
「パンの匂い…」
「お、もう起きたのか?チビの好きなチョコクロワッサン焼いてきたから顔洗って来いよ。一緒に食おうぜ」
「うん!わかった!」
まだ寝ているデスの身体を踏んづけながらベッドから降りたラスは、脱兎の如くバスルームの洗面台で顔を洗うと、まだびしょびしょのまま戻って来てコハクにタオルで顔を拭かれた。
「急ぎ過ぎ!パンは逃げません!」
「熱いうちに食べたいのっ。いただきまーす」
さくっとした感触の直後にチョコがたっぷり現れて、きらきら瞳を輝かせたラスは脚をばたばたさせて身悶えした。
「おいしーい!」
「全部食っていいからな。あいつが起きて来ると手品みたく一瞬で無くなるし、これは全部チビのだぜ」
「やったあ!」
「………パン……美味しそう…」
無限の胃袋を持つ死神がむくりと起き上がったのを見たコハクは、パンが視界に入らないようにデスの前で立ち塞がると、手編みのカゴの中で山積みになっているパンを指した。
「お前用のはあっち!山盛り作っといたからな、チビのは絶対食うなよ!」
「………わかった」
「一緒食べよ!コーのチョコクロワッサンは世界1なんだから!」
ラスに誉められて有頂天になった魔王は、ラスの口の端についたチョコを舌で舐め取ると、さっきから庭でがおがおと叫んで催促しているドラちゃんをバルコニーに出て見下ろした。
「チビ、この後あのエロドラゴンをブラシで擦ってやれよ。それからクリスタルパレスで引っ越し風景を観察して、小僧の書類整理を手伝ったり色々やるけど疲れたら絶対すぐ言うんだぞ。な?」
「うん、わかった。お店も沢山あるんでしょ?見てもいいと思う?」
「や、商品とか道具とか今日1日で搬入させっから邪魔になると思うから明日にしような」
「リロイたちも一緒に行くよね?ティアラ…日記読んだかな。元気出たかな」
話しているうちに山盛りだったはずのパンを綺麗に平らげたデスがじわりと近付いてきたので、手早くラス用のランチボックスに残りのパンを詰め込むと、まだ両手でパンを持ってもぐもぐしているラスを抱っこして部屋から出た。
「小僧と一緒に居れば元気だろ。あいつらはたから見たらもう両想い同然なんだけどな。めんどくせえな」
といいつつも、脚はティアラたちの部屋に向かっていた。
眠りつつも反射的にくんくん鼻を鳴らしたラスは、カートの音と紅茶の香りと香ばしいパンの匂いに操り人形のようにゆらりと身体を起こして目を擦った。
「パンの匂い…」
「お、もう起きたのか?チビの好きなチョコクロワッサン焼いてきたから顔洗って来いよ。一緒に食おうぜ」
「うん!わかった!」
まだ寝ているデスの身体を踏んづけながらベッドから降りたラスは、脱兎の如くバスルームの洗面台で顔を洗うと、まだびしょびしょのまま戻って来てコハクにタオルで顔を拭かれた。
「急ぎ過ぎ!パンは逃げません!」
「熱いうちに食べたいのっ。いただきまーす」
さくっとした感触の直後にチョコがたっぷり現れて、きらきら瞳を輝かせたラスは脚をばたばたさせて身悶えした。
「おいしーい!」
「全部食っていいからな。あいつが起きて来ると手品みたく一瞬で無くなるし、これは全部チビのだぜ」
「やったあ!」
「………パン……美味しそう…」
無限の胃袋を持つ死神がむくりと起き上がったのを見たコハクは、パンが視界に入らないようにデスの前で立ち塞がると、手編みのカゴの中で山積みになっているパンを指した。
「お前用のはあっち!山盛り作っといたからな、チビのは絶対食うなよ!」
「………わかった」
「一緒食べよ!コーのチョコクロワッサンは世界1なんだから!」
ラスに誉められて有頂天になった魔王は、ラスの口の端についたチョコを舌で舐め取ると、さっきから庭でがおがおと叫んで催促しているドラちゃんをバルコニーに出て見下ろした。
「チビ、この後あのエロドラゴンをブラシで擦ってやれよ。それからクリスタルパレスで引っ越し風景を観察して、小僧の書類整理を手伝ったり色々やるけど疲れたら絶対すぐ言うんだぞ。な?」
「うん、わかった。お店も沢山あるんでしょ?見てもいいと思う?」
「や、商品とか道具とか今日1日で搬入させっから邪魔になると思うから明日にしような」
「リロイたちも一緒に行くよね?ティアラ…日記読んだかな。元気出たかな」
話しているうちに山盛りだったはずのパンを綺麗に平らげたデスがじわりと近付いてきたので、手早くラス用のランチボックスに残りのパンを詰め込むと、まだ両手でパンを持ってもぐもぐしているラスを抱っこして部屋から出た。
「小僧と一緒に居れば元気だろ。あいつらはたから見たらもう両想い同然なんだけどな。めんどくせえな」
といいつつも、脚はティアラたちの部屋に向かっていた。