魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
1度ティアラたちの部屋に寄った後庭に下り立ったコハクとラスとデスだったが…


真っ黒な巨体のドラゴンが美少女の…ラスの前で腹を出して横たわっている姿は、なんともシュールな光景だった。


「ドラちゃん気持ちいい?」


『気持ちいい。ベイビィちゃん、その腹の中のやつを出した後は、次は俺との卵を生んでくれ。きっと強く美しい子が…』


「おいエロドラゴン、てめえまだ諦めてなかったのか!第一お前の巨体とチビが……あああぁ考えたくねえ!」


ドラちゃんがラスを襲っている想像をしてみて身震いしたコハクが悶えていると、ブラシを手にドラちゃんの腹を擦りまくっていたラスが顔を上げて笑った。


「ドラちゃんって人間だったら絶対かっこいいよね。サラマンダーさんもかっこよかったもんね」


『俺も人に化けれる。見たいかい?』


「ほんとっ!?」


「あーっ、ストップストップ!とにかく卵とかぜってぇ生ませねえし!ドラゴン磨き終了!早く行くぞー」


『ドラばっかり狡い!チビ、今度は僕を洗ってね!』


「うん、わかった」


ケルベロスの要求に笑顔で頷いたラスは、城から出て来たティアラに駆け寄ると腕に抱き着いてこっそり耳打ちをした。


「日記はもう見たの?」


「ええ、半分ほど。…とても懐かしくて、大切な何かを取り戻した気分になれたわ。ラス…これをお母様が?」


「うん、フィリア様が“持って行きなさい”って。あとフィリア様の日程が決まったら迎えに行くから、その時は沢山お話できるといいね」


純粋に応援してくれるラスにきゅんとしたティアラがラスに抱き着くと、女同士のハグならぎりぎりOKの魔王はそれでもいらいら足踏みをして腹いせにドラちゃんの太い尻尾を踏みつけた。


「チビ、早く行こうぜ。ひよことかうさぎとか触りてえんだろ?」


「うん!あ、グラースとリロイ!おはよう、今日もいい天気だねっ」


皆が集うとラスを独り占めできないので、そこはなんとか不平を呑み込んだコハクの周りをベルルが飛び回り、意地悪気ににやっと笑われてからかわれた。


「赤ちゃんが生まれるともっと構ってもらえないんじゃないですか?」


「ふん、それでも構ってもらうし!よーし、行くぞー」


――クリスタルパレスは今日中に引っ越しを完了させた後、リーダー投票の後、再興を終える。


そのリーダーになるべき男は、優しげな笑みを浮かべてまとわりつくラスの頭を撫で、コハクの視線に気付いてふっと鼻で笑った。


「なんだ?」


「なんでもねえし」


リーダーになるべき男は、リロイしか居ない。
< 556 / 728 >

この作品をシェア

pagetop