魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
素知らぬ顔をするのは簡単だが、想像もつかないほど長く生きてきたコハクには何もかもお見通しだったようだ。
それでもリロイは気付かないふりをしてコハクを見つめたが、甲斐甲斐しくラスの世話をしつつも赤い瞳を光らせたコハクの言わんとしていることは如実に伝わってきた。
「もしかして…リーダー投票のことか?」
「後はもうそれだけだろ。お前らがくっつきそうでくっつかねえからこっちはいらいらすんだよ。ここのリーダーになってボインと結婚すりゃいいじゃねえか。それで万事OK!」
「な…、勝手なことを言うな!…僕たちには僕たちの事情があるんだ。勝手な世話を焼くな」
「でもリロイ…コーの言ってることは正しいと思うの。ねえ、ここのリーダー…つまり王様だよね?王様になったら身分はどうなの?あの王子様より上?」
「上だろうな。何せここには水晶がある。あのチビハゲエロ王子は血統が良いだけのちっせえ国の王子だろ。チビのためにもここのリーダーになってボインと結婚しろ!」
無理難題を言って迫ってきたコハクの膝に乗っていたラスはすくっと立ち上がると、ティアラの手を引っ張って輪から抜け出して声を落とした。
「リロイって難しい。ティアラはどう?リロイと結婚したいでしょ?逆プロポーズしちゃえば?」
「…でもラス…私があの王子と結婚することは国民はもう知っているのよ。今さら相手が変わったらおかしく思われるわ。それに国の威信にも関わるから」
「難しく考え過ぎじゃない?私なら好きな人と逃げちゃうよ。…そこまで好きじゃないってこと?」
ラスが訝しむ表情をしたので、慌てたティアラはぶんぶんと首を振って赤いガーベラが咲き誇る花壇の前でしゃがみこんだ。
「…すごく好き。ラスが届けてくれた日記を今読み返してるんだけど…あの頃よりもきっともっと好き。私だって逃げたいの。何もかも捨てて逃げたい。でもラス…あなたならわかるはずよ。王女はそんなことをしてはいけないの。ラス、あなたも本来なら好きでもない人と結婚してたかも」
「そうかもしれないけど、でも私は好きな人と結婚するよ?赤ちゃんもできたよ?王女の立場ってそんなに大切?国民がどう思ってるとか私気にしたことないよ?」
「チビー!戻って来ーい!寂しいだろ!」
寂しがる声を上げたコハクに手を振り返したラスは、ガーベラを一輪摘んでティアラの耳元に挿してやると、一緒に手を繋いで彼らの輪へと戻った。
「ね、よく考えて」
「…ええ」
よく考えても、答えは一緒だった。
それでもリロイは気付かないふりをしてコハクを見つめたが、甲斐甲斐しくラスの世話をしつつも赤い瞳を光らせたコハクの言わんとしていることは如実に伝わってきた。
「もしかして…リーダー投票のことか?」
「後はもうそれだけだろ。お前らがくっつきそうでくっつかねえからこっちはいらいらすんだよ。ここのリーダーになってボインと結婚すりゃいいじゃねえか。それで万事OK!」
「な…、勝手なことを言うな!…僕たちには僕たちの事情があるんだ。勝手な世話を焼くな」
「でもリロイ…コーの言ってることは正しいと思うの。ねえ、ここのリーダー…つまり王様だよね?王様になったら身分はどうなの?あの王子様より上?」
「上だろうな。何せここには水晶がある。あのチビハゲエロ王子は血統が良いだけのちっせえ国の王子だろ。チビのためにもここのリーダーになってボインと結婚しろ!」
無理難題を言って迫ってきたコハクの膝に乗っていたラスはすくっと立ち上がると、ティアラの手を引っ張って輪から抜け出して声を落とした。
「リロイって難しい。ティアラはどう?リロイと結婚したいでしょ?逆プロポーズしちゃえば?」
「…でもラス…私があの王子と結婚することは国民はもう知っているのよ。今さら相手が変わったらおかしく思われるわ。それに国の威信にも関わるから」
「難しく考え過ぎじゃない?私なら好きな人と逃げちゃうよ。…そこまで好きじゃないってこと?」
ラスが訝しむ表情をしたので、慌てたティアラはぶんぶんと首を振って赤いガーベラが咲き誇る花壇の前でしゃがみこんだ。
「…すごく好き。ラスが届けてくれた日記を今読み返してるんだけど…あの頃よりもきっともっと好き。私だって逃げたいの。何もかも捨てて逃げたい。でもラス…あなたならわかるはずよ。王女はそんなことをしてはいけないの。ラス、あなたも本来なら好きでもない人と結婚してたかも」
「そうかもしれないけど、でも私は好きな人と結婚するよ?赤ちゃんもできたよ?王女の立場ってそんなに大切?国民がどう思ってるとか私気にしたことないよ?」
「チビー!戻って来ーい!寂しいだろ!」
寂しがる声を上げたコハクに手を振り返したラスは、ガーベラを一輪摘んでティアラの耳元に挿してやると、一緒に手を繋いで彼らの輪へと戻った。
「ね、よく考えて」
「…ええ」
よく考えても、答えは一緒だった。