魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
フィリアたちに会いに行った翌日の朝――ラスたちの部屋の窓をこつこつと叩く白い鳥が飛来した。

嘴には手紙を咥えており、早速フィリアが予定を空けてこちらに来ようとしていることを知ったラスは、手紙を胸に押しつけて喜んだ。


「コー、ティアラたちに早く知らせに行こっ」


「しかしはええな、まあ俺は別にいいけど。あのチビハゲエロ王子が城の中に居るのが実は苦痛だったんだよなー。早く追い出しちまおう」


欠伸をしつつラスの頬をぺろぺろと舐めたコハクがベッドから身体を起こすと、それよりも早くベッドから抜け出したラスは早速ガウンを着こむとコハクの手を引っ張ってティアラたちの部屋に向かったのだが――

白い鳥は…1羽ではなかった。

1羽はラスたちの元へ。

そしてもう1羽は…フォーンの部屋の窓に飛来し、フォーンは口ひげを撫でながら嘴に咥えていた手紙を開いたが…中に書かれてある内容はフォーンが目論んでいたこととは少し違っていた。


「フィリア女王が…ここに?」


…仲間外れにされていることを知られたら立場が危うくなる――

王たる者、下々の者を従えてこその真の王者。

だが度胸のないフォーンはどう考えてもリロイやコハクを捻じ伏せる方法が思いつかずに部屋の中をうろうろしていると、廊下で女の子がはしゃいでいる声がしたのでドアを開けて覗いてみた。


「おおラス王女」


「あ…王子様。今ちょっと急いでるから後でねっ」


「どうしたのですか?」


ラスが“急いでいる”と言ったにも関わらず呼び止めたフォーンは、ラスが足踏みを踏んで頬を膨らませた姿にでれっとしつつ、真っ赤で瞳を睨んでいるコハクの視線が恐ろしくてラスを見つめることに集中。


「あのね、フィリア様がティアラに会いに来るの。だから迎えに行かなくちゃ。ね、コー」


「ああ。俺の城にお前が滞在するのも今日が最後だな。ま、もうちょっといじめたかったけどハゲが移るといやだしさっさと出て行ってもらうからな」


「し、失礼な!」


フィリアは一体何をしにここに来るのだろうか?

“グリーンリバーに来てくれ”と手紙に書いたわけでもないし、自分だけに手紙を寄越すならともかく…ラスたちの所にも?

混乱して黙り込んだフォーンの手に手紙が握られているのを目敏く見つけたコハクは、ラスを心配させないためにもそれを言わずにラスを抱っこして螺旋階段を降りた。


「コー、まだお話の途中だよ」


「いいのいいの。あいつと話したって時間の無駄だし」


そして手紙を持ったラスがティアラたちの部屋に朗報を伝えに行く。
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