魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスたちがケルベロスに乗ってグリーンリバーを発った後、ティアラは母のフィリアが好きだと言ってくれるアップルパイを焼いた。
もちろん傍にはリロイがついて見守っていたのだが、何せドラゴンや魔犬で空を駆ければひとっ飛びの距離。
よもや女王のフィリアをケルベロスに乗せるのか?と不安もよぎったが、1時間後――フィリアは2年前旅をしていた時に使っていた白い馬車に乗って現れた。
「ティアラ王女様、お客様です」
全身肌の色が真っ赤で先端がハート型の尻尾をした改造済みの魔物が声をかけに来ると、ティアラは慌ててエプロンを脱いで正面玄関に向かう。
そしてそこに…久々に見た男の姿が在った。
「おお、ティアラ王女。フィリア女王陛下が到着なさったとか」
「…フォーン王子…何故それを知って…」
「私の元にも手紙が来ましたからな。…おや、ご存じなかったのですか?」
呆然としているティアラの顔を見て肩で笑ったフォーンがティアラの全身を視線で撫でたのを見たリロイは自然な動作で間に割り込み、にこりと笑いかけた。
「フィリア女王陛下はティアラ王女に大切なお話があってのご訪問です。きっとあなたにも大切なお話があるでしょう」
「そうですな、私が手紙にしたためた件についても何かしらのお話があるでしょうからな」
…相変らず含みのある言い方だ。
ティアラの表情が曇ると、リロイはそっと細い肩を抱いて正面の扉を押した。
とても大きな扉だが魔法がかけられてあるのかいとも簡単に開き、ちょうどフィリアが馬車から降りてくる所だったのでリロイが駆け寄ると、片膝をついて恭しくその手を取った。
「フィリア女王陛下」
「白騎士リロイ…またお会いしましたね。急な来訪でごめんなさいね、どうしてもティアラと話をしなければならなかったの」
「いえ、ティアラ女王もお喜びです。僕がご案内します」
洗練された立ち振る舞いはフォーンを歯噛みさせたが、フィリアはきっと自分に会いに来たのだと信じているフォーンは、しずしずと城内へ入って行くフィリアに声をかけた。
「フィリア女王陛下、お久しぶりですな」
「……ああ、あなたは…お久しぶりですね。今は急いでいるのでまた後程」
――一緒について行ってはいけない、と暗に言われたフォーンは拳を握りしめて悔しがったが、その横を真っ黒くて細い身体の男がラスを抱っこして通り過ぎていきながら鼻でせせら笑った。
「ようチビハゲエロ王子。お前はきっとあれだな、婚約破棄をされに来たんだぜ」
「そ、そんなことはない!」
そう返したが、不安がよぎった。
もちろん傍にはリロイがついて見守っていたのだが、何せドラゴンや魔犬で空を駆ければひとっ飛びの距離。
よもや女王のフィリアをケルベロスに乗せるのか?と不安もよぎったが、1時間後――フィリアは2年前旅をしていた時に使っていた白い馬車に乗って現れた。
「ティアラ王女様、お客様です」
全身肌の色が真っ赤で先端がハート型の尻尾をした改造済みの魔物が声をかけに来ると、ティアラは慌ててエプロンを脱いで正面玄関に向かう。
そしてそこに…久々に見た男の姿が在った。
「おお、ティアラ王女。フィリア女王陛下が到着なさったとか」
「…フォーン王子…何故それを知って…」
「私の元にも手紙が来ましたからな。…おや、ご存じなかったのですか?」
呆然としているティアラの顔を見て肩で笑ったフォーンがティアラの全身を視線で撫でたのを見たリロイは自然な動作で間に割り込み、にこりと笑いかけた。
「フィリア女王陛下はティアラ王女に大切なお話があってのご訪問です。きっとあなたにも大切なお話があるでしょう」
「そうですな、私が手紙にしたためた件についても何かしらのお話があるでしょうからな」
…相変らず含みのある言い方だ。
ティアラの表情が曇ると、リロイはそっと細い肩を抱いて正面の扉を押した。
とても大きな扉だが魔法がかけられてあるのかいとも簡単に開き、ちょうどフィリアが馬車から降りてくる所だったのでリロイが駆け寄ると、片膝をついて恭しくその手を取った。
「フィリア女王陛下」
「白騎士リロイ…またお会いしましたね。急な来訪でごめんなさいね、どうしてもティアラと話をしなければならなかったの」
「いえ、ティアラ女王もお喜びです。僕がご案内します」
洗練された立ち振る舞いはフォーンを歯噛みさせたが、フィリアはきっと自分に会いに来たのだと信じているフォーンは、しずしずと城内へ入って行くフィリアに声をかけた。
「フィリア女王陛下、お久しぶりですな」
「……ああ、あなたは…お久しぶりですね。今は急いでいるのでまた後程」
――一緒について行ってはいけない、と暗に言われたフォーンは拳を握りしめて悔しがったが、その横を真っ黒くて細い身体の男がラスを抱っこして通り過ぎていきながら鼻でせせら笑った。
「ようチビハゲエロ王子。お前はきっとあれだな、婚約破棄をされに来たんだぜ」
「そ、そんなことはない!」
そう返したが、不安がよぎった。