魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイは“試されている”と感じていた。

ティアラは女王になる身なのだから、身分のない自分に嫁がせるにはそれ相応の代償が必要だ。

もちろんそれに気づいていたリロイは、潤んだ瞳で手を握ってきたティアラの手を強く握り返してフィリアをまっすぐに見据えた。


「僕に…覚悟を?」


「そう。いくら卑小といえどもフォーンは由緒ある血統の国の王子です。あなたは身分では彼に勝てない。だけど私はティアラに幸せになってほしい。あなたはどうしますか?何をしてティアラを手に入れるの?」


「…わかりません。今必死に考えています。ですが、僕が…僕の手でティアラを幸せにしてやりたい。フォーン王子が現れてからずっとそう…思っていました」


「リロイ…!私…嬉しい…!お母様、私…」


「…まったく…困ったものね」


呆れたフィリアがソファの背もたれに身体を預けると、ティアラは熱い瞳でリロイと見つめ合う。

そんな彼らをラスを後ろ抱っこしてにやにやしながら見ていたコハクは、リロイたちに聴こえるように甲高い口笛を吹いた。


「やるじゃーん。まあ堅苦しく考えるなよ。決闘すりゃいいじゃん、決闘。それで勝てばボインを手に入れることができる。どうだ?」


「…そんな手段は野蛮だ。僕は賛成できかねる」


「んなこと言ったってさあ、後はもう1つしか残ってねえじゃん。くよくよ考えるよりも即行動!愛し合ってるんならさっさとくっつけって。マジでいらいらすんだよ」


「コー、怒っちゃ駄目。でも愛の告白聴けちゃった…すっごく感動するねっ」


「そっか?俺がいっつも愛の告白してんじゃん!ふんだ」


ラスは身をよじっていじけてしまったコハクの唇にちゅっとキスをすると、きらきらした瞳でリロイとティアラを見つめた。

ようやく…2年の時を経てようやく結ばれようとしている2人は互いの想いを告白することによって、さらに惹かれ合っているように見えた。


「一気に色々話しすぎてしまったわね。それにフォーン王子とも話をしなければ」


「お母様…フォーン王子と何の話を…?」


不安そうにティアラが問うと、フィリアは表情を曇らせながら肩を竦め、膝に乗せているいつも手放さない樫の木で作られた白い杖を撫でた。


「彼も私に手紙を飛ばしていたのよ。…“ティアラとの結婚式を前倒しできないか”って。大丈夫よ、私にそんな気はありませんから」


「…フォーン王子がそんな手紙を…」


とことん神経を逆なでしてくるフォーンに殺意を抱いてしまったリロイは、心を落ち着けるように何度も深呼吸を繰り返した。
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