魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
各王国にはそれぞれ騎士団が存在するが、その中でも最も有名で格式高いのが白騎士団だ。
リロイは若くしてその隊長を務め、いずれはラスと結婚するだろうと噂されていた男。
だが…リロイが求婚しようとしているのはレッドストーン王国の王女で、ラスには真っ黒い男がべったり張り付いているわけで――
人々は彼らの事情をほとんど知らなかったが、それでも声援が飛び交い、壇上で身体を縮めて小さくしているフォーン王子を目の敵だといわんばかりに糾弾する。
ティアラの瞳はリロイにくぎ付けで、リロイは微笑んだままフォーンに剣を差出し続けていた。
「フォーン王子、早く剣を取って下さい」
「わ、私は王子だぞ!騎士団のお前に勝てるわけがない!」
「最初から決めつけるのはよくないですよ。死にもの狂いになってもティアラが欲しいでしょう?…僕は欲しい。彼女は物じゃないけど、僕が今最も大切にしたい人です」
「リロイ…」
呟いたティアラの瞳は潤み、床に落ちたリロイの真っ白なマントを胸にかき抱いたまま感動している。
人々の糾弾の声はやがて怒号へと変わり、フォーンへの包囲網を狭めていた。
「早く剣を取ってリロイさんと戦えー!」
「男なら正々堂々命を賭けて戦え!男だろうが!」
やがてフォーンの手でかくかくと動いて剣を握ると、コハクがコーフンした声を上げながらラスに被害が及ばないように颯爽と椅子から立ち上がった。
「うわーっ、面白くなってきたー!おいフィリアとグラース、お前たちもここから降りろよ。デス…あいつは人ごみが嫌で城内だったか。存在感なくてつい忘れちまうな」
「コー、魔法でリロイのお手伝いしちゃ駄目だよ、これは真剣勝負なんだから」
「わかってるって。んなことしなくったってあいつは強いだろ。…ま、俺には到底敵わねえけどな」
皆で階段を下りると、最前列に居た人々が中央を開けてくれて、最高の観覧席を譲ってくれた。
ラスは皆に笑いかけてお礼を言い、壇上のリロイとフォーンに目を戻す。
「もう白騎士団の礼はしません。あなたと僕は今身分を超えて男と男として、ひとりの女性を巡る戦いを始めるんです。…行きます」
「ま、待て!」
心の準備ができていないフォーンが情けない声を上げたが、リロイは精神を一切乱すことなく、稲妻のようにフォーンに切り込んだ。
リロイは若くしてその隊長を務め、いずれはラスと結婚するだろうと噂されていた男。
だが…リロイが求婚しようとしているのはレッドストーン王国の王女で、ラスには真っ黒い男がべったり張り付いているわけで――
人々は彼らの事情をほとんど知らなかったが、それでも声援が飛び交い、壇上で身体を縮めて小さくしているフォーン王子を目の敵だといわんばかりに糾弾する。
ティアラの瞳はリロイにくぎ付けで、リロイは微笑んだままフォーンに剣を差出し続けていた。
「フォーン王子、早く剣を取って下さい」
「わ、私は王子だぞ!騎士団のお前に勝てるわけがない!」
「最初から決めつけるのはよくないですよ。死にもの狂いになってもティアラが欲しいでしょう?…僕は欲しい。彼女は物じゃないけど、僕が今最も大切にしたい人です」
「リロイ…」
呟いたティアラの瞳は潤み、床に落ちたリロイの真っ白なマントを胸にかき抱いたまま感動している。
人々の糾弾の声はやがて怒号へと変わり、フォーンへの包囲網を狭めていた。
「早く剣を取ってリロイさんと戦えー!」
「男なら正々堂々命を賭けて戦え!男だろうが!」
やがてフォーンの手でかくかくと動いて剣を握ると、コハクがコーフンした声を上げながらラスに被害が及ばないように颯爽と椅子から立ち上がった。
「うわーっ、面白くなってきたー!おいフィリアとグラース、お前たちもここから降りろよ。デス…あいつは人ごみが嫌で城内だったか。存在感なくてつい忘れちまうな」
「コー、魔法でリロイのお手伝いしちゃ駄目だよ、これは真剣勝負なんだから」
「わかってるって。んなことしなくったってあいつは強いだろ。…ま、俺には到底敵わねえけどな」
皆で階段を下りると、最前列に居た人々が中央を開けてくれて、最高の観覧席を譲ってくれた。
ラスは皆に笑いかけてお礼を言い、壇上のリロイとフォーンに目を戻す。
「もう白騎士団の礼はしません。あなたと僕は今身分を超えて男と男として、ひとりの女性を巡る戦いを始めるんです。…行きます」
「ま、待て!」
心の準備ができていないフォーンが情けない声を上げたが、リロイは精神を一切乱すことなく、稲妻のようにフォーンに切り込んだ。