魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイが振り下ろした長剣は、フォーンの頭からつま先までを一刀両断したかのように見えた。
「ひ、ひぃっ!」
「今のは避けたんですか?よろけたんですか?あなたは運がいい」
実際はリロイの気迫に気圧されたフォーンが後ずさりした結果、眉間を縦に少し切られた程度だったが、剣で斬られた経験などないフォーンは、額から滴り落ちる血にパニックになり、あわてふためいた。
「痛い!貴様…一国の王になる私に手を上げるなど許されることじゃないぞ!」
「あなたはご実家を継げばいい。僕はここであなたに勝った後、ティアラを攫います。フィリア女王陛下に結婚を反対されたら…駆け落ちします。…王族殺しになってもいい。僕は今ここで、あなたを倒す」
リロイの金色の瞳が一段と明るく輝き、フォーンは剣を構えなおしたはいいものの脚が震えて動くことができない。
民衆はもっぱらリロイの味方で、怪我をしないように脇に控えているティアラもリロイに夢中で、フォーンを見ようともしない。
完全なアウェイの状態でさらに身が竦み、もはや戦意などまったく持ち合わせていないフォーンだったが、それでもプライドだけは人一倍持ち合わせていた。
「王族殺しになればティアラ王女も追われる身となる!彼女は私と結婚した方が幸せになれる!そ、そうだ、時々ティアラ王女と会うことを特別に許してやってもいい!だが手すら触れてはならん!彼女は私の妻となる高潔なる身なのだから!」
「…ティアラには指1本触れさせない。僕があなたを殺してしまったら…僕もティアラも共に果てます。僕たちはもう…絶対に離れない」
「リロイ…!ええ、私も一緒に死にます!あなたと一緒に、私も死ぬわ!」
――ティアラの絶叫はコハクの魔法によって何倍にも増幅され、広場に集まって全ての人々の耳に行き届いた。
女は感動して涙を流し、男はいきり立ってリロイに声援を送る――広場に集まる皆の心は、ひとつになっていた。
「コー…私、どうしよう…っ、前が見えないよ…ぼやけちゃうよ…!」
「チビ…よく見とけよ。あいつらは死ぬ覚悟をしてるんだ。…俺とチビもそうだったろ?俺もチビのためなら命を捨てられる。ま、死なねえから真実味がねえけどな」
「ううん、そんなことないよ…!コー、ぎゅってして。お願い…」
コハクは背中からラスを抱きしめながらも、壇上のリロイとフォーンから目を離さなかった。
魔王城でリロイと戦った時のことを思い出していた。
「ひ、ひぃっ!」
「今のは避けたんですか?よろけたんですか?あなたは運がいい」
実際はリロイの気迫に気圧されたフォーンが後ずさりした結果、眉間を縦に少し切られた程度だったが、剣で斬られた経験などないフォーンは、額から滴り落ちる血にパニックになり、あわてふためいた。
「痛い!貴様…一国の王になる私に手を上げるなど許されることじゃないぞ!」
「あなたはご実家を継げばいい。僕はここであなたに勝った後、ティアラを攫います。フィリア女王陛下に結婚を反対されたら…駆け落ちします。…王族殺しになってもいい。僕は今ここで、あなたを倒す」
リロイの金色の瞳が一段と明るく輝き、フォーンは剣を構えなおしたはいいものの脚が震えて動くことができない。
民衆はもっぱらリロイの味方で、怪我をしないように脇に控えているティアラもリロイに夢中で、フォーンを見ようともしない。
完全なアウェイの状態でさらに身が竦み、もはや戦意などまったく持ち合わせていないフォーンだったが、それでもプライドだけは人一倍持ち合わせていた。
「王族殺しになればティアラ王女も追われる身となる!彼女は私と結婚した方が幸せになれる!そ、そうだ、時々ティアラ王女と会うことを特別に許してやってもいい!だが手すら触れてはならん!彼女は私の妻となる高潔なる身なのだから!」
「…ティアラには指1本触れさせない。僕があなたを殺してしまったら…僕もティアラも共に果てます。僕たちはもう…絶対に離れない」
「リロイ…!ええ、私も一緒に死にます!あなたと一緒に、私も死ぬわ!」
――ティアラの絶叫はコハクの魔法によって何倍にも増幅され、広場に集まって全ての人々の耳に行き届いた。
女は感動して涙を流し、男はいきり立ってリロイに声援を送る――広場に集まる皆の心は、ひとつになっていた。
「コー…私、どうしよう…っ、前が見えないよ…ぼやけちゃうよ…!」
「チビ…よく見とけよ。あいつらは死ぬ覚悟をしてるんだ。…俺とチビもそうだったろ?俺もチビのためなら命を捨てられる。ま、死なねえから真実味がねえけどな」
「ううん、そんなことないよ…!コー、ぎゅってして。お願い…」
コハクは背中からラスを抱きしめながらも、壇上のリロイとフォーンから目を離さなかった。
魔王城でリロイと戦った時のことを思い出していた。