魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
一撃必殺を繰り出せば、すぐにでもフォーンの命を奪える状況にあった。
だがリロイがそうしないのは、ティアラが追われる身となることを避けたかったからだ。
国に誇りを持ち、その誇りがあるからこそしたくもない結婚の道を選んだティアラ――
だが…それももう終わりだ。
ティアラも自分も、共に命果ててもいいと誓い合ったのだから…躊躇するのはもうやめよう。
「僕は…あなたを殺す」
いつもより低い声色でリロイがそう呟くと、フォーンは顔色を真っ青にして剣を持つ右手を震わせた。
ただで手に入るものだと思っていたティアラとレッドストーン王国は、リロイを倒さなければ手に入れることができない――
だが眼前のリロイには絶対に勝てないという妙な自信があった。
「ま、待て!貴様正気か!?こんな大勢の民衆の前で私を殺すというのか!?」
「あなたを倒さなければ、僕もティアラも幸せにはなれない。…それがいっときのことであっても、そうしなければならないんです。…痛みを感じないように一瞬で終わらせます。フォーン王子…さようなら」
「コー…駄目、やめさせてっ!リロイとティアラが追われる身になるなんて駄目!コー!」
じっと見守っていたコハクは、ラスをぎゅっと抱きしめながらも、誰にも気付かれないようにぱちんと指を鳴らすと、リロイの剣の刃先を丸くした。
フォーンに向かってゆくリロイのスピードだけは緩めることができないので、もうひとつフォーン側に魔法をかけた。
「う、わ…っ」
「!」
突然フォーンの足元が滑って尻餅をつくと、白騎士をやめたとはいえ、騎士道精神はまったく抜けきっていないリロイの動きが止まった。
それでもフォーンが立ち上がるまで待っているつもりなのか、燃え上がる金色の瞳でじっとフォーンを見下ろしていると、完全に怖気づいたフォーンは剣を投げ出して頭を抱えて身体を丸くした。
「こ、降参する!だから私を殺さないでくれ!」
「…フォーン王子…あなたのティアラへの想いはその程度だったということですね」
「リロイ!リロイ!!」
――愛しい声が近付いて来る。
振り向くと、ティアラが顔をくしゃくしゃにしながら駆けて来て腰に抱きついてきた。
「ティアラ…僕は…勝ったんですよね?」
「ええ…!リロイ…あなたが勝ったんです!リロイ…!」
1度大きく深呼吸をしたリロイは、ティアラを身体から離れさせて片膝を折り、見上げた。
だがリロイがそうしないのは、ティアラが追われる身となることを避けたかったからだ。
国に誇りを持ち、その誇りがあるからこそしたくもない結婚の道を選んだティアラ――
だが…それももう終わりだ。
ティアラも自分も、共に命果ててもいいと誓い合ったのだから…躊躇するのはもうやめよう。
「僕は…あなたを殺す」
いつもより低い声色でリロイがそう呟くと、フォーンは顔色を真っ青にして剣を持つ右手を震わせた。
ただで手に入るものだと思っていたティアラとレッドストーン王国は、リロイを倒さなければ手に入れることができない――
だが眼前のリロイには絶対に勝てないという妙な自信があった。
「ま、待て!貴様正気か!?こんな大勢の民衆の前で私を殺すというのか!?」
「あなたを倒さなければ、僕もティアラも幸せにはなれない。…それがいっときのことであっても、そうしなければならないんです。…痛みを感じないように一瞬で終わらせます。フォーン王子…さようなら」
「コー…駄目、やめさせてっ!リロイとティアラが追われる身になるなんて駄目!コー!」
じっと見守っていたコハクは、ラスをぎゅっと抱きしめながらも、誰にも気付かれないようにぱちんと指を鳴らすと、リロイの剣の刃先を丸くした。
フォーンに向かってゆくリロイのスピードだけは緩めることができないので、もうひとつフォーン側に魔法をかけた。
「う、わ…っ」
「!」
突然フォーンの足元が滑って尻餅をつくと、白騎士をやめたとはいえ、騎士道精神はまったく抜けきっていないリロイの動きが止まった。
それでもフォーンが立ち上がるまで待っているつもりなのか、燃え上がる金色の瞳でじっとフォーンを見下ろしていると、完全に怖気づいたフォーンは剣を投げ出して頭を抱えて身体を丸くした。
「こ、降参する!だから私を殺さないでくれ!」
「…フォーン王子…あなたのティアラへの想いはその程度だったということですね」
「リロイ!リロイ!!」
――愛しい声が近付いて来る。
振り向くと、ティアラが顔をくしゃくしゃにしながら駆けて来て腰に抱きついてきた。
「ティアラ…僕は…勝ったんですよね?」
「ええ…!リロイ…あなたが勝ったんです!リロイ…!」
1度大きく深呼吸をしたリロイは、ティアラを身体から離れさせて片膝を折り、見上げた。