魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それから城に戻るまでが一苦労だった。

さすがにこんな大勢の人々が居る中でケルベロスやドラちゃんを召喚するわけにはいかず、詰め寄ってくる人々をかき分けて城に戻った時には全員くたくただった。


「デス!あのねっ、リロイとティアラが結婚するの!デスも一緒に来ればよかったのにっ」


「……俺…人ごみ…駄目…」


デスが腰に抱き着いてきたラスの髪を撫で回しながら呟いたが、興奮してはしゃいでいるラスは、微笑み合っているリロイとティアラを何度もチラ見しながらまた抱き着こうして、コハクに首根っこを掴まれた。


「こらチビ、あいつらのことは今日はそっとしておいてやれよ」


「え、どうして?だって今日は…みんなでお祝いするでしょ?」


「まあそれはいいけどさあ、だってさあ、あいつらは今夜……するだろ?」


コハクがラスの耳元でこそこそ耳打ちをすると、ラスの顔が一気に赤くなり、もじもじしながらコハクの手をぎゅっと握る。


「そ、そっか…。うん、そうだよね。邪魔をしちゃいけないよね。コー、どうしよう!私が緊張してきちゃった!」


「……?…俺にも教えて…」


「駄目ー。自分で考えろよな。ってなわけで、とりあえずみんなで祝おうぜ。実はさあ、イエローストーン王国時代に有名だった蒸留酒なんだけど、試験的に作ってみたんだ。今夜はみんなでそれ飲もうぜ」


「わあっ、私も飲みたい!…でも駄目だよね…ベビーが酔っぱらっちゃうもんね…」


「チビにはものすごーーくアルコール度の弱い果実酒を作ってやるよ。おい小僧、今夜は足腰立たなくして邪魔してやるからな」


コハクがソファに座って手を握り合っていたリロイにそう声をかけると、途端に2人の顔がラス以上に真っ赤になった。

やはり本人たちもそれを想定していたことがばればれになってしまって慌てる姿はコハクを爆笑させてまたラスを撫で回す。


「ふぃ、フィリア女王陛下…フォーン王子はどうされるんですか?あなたに被害が及ぶのでは…」


「その辺は気にしないで。フォーン王子は浮気をしたというもっぱらの噂でしたし、強気に行くわ。第一私もフォーン王子に昨日はじめてお会いして幻滅したもの」


…意外と毒舌なフィリアが本音を明かしてぺろっと舌を出した。


「おいベルルちょっと出て来い。お前に頼みがある」


「はいはーい。なんですかー?」


コハクはベルルを肩に乗せてひそひそと耳打ちをした。
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