魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
バスルームから出ると、部屋は相変わらず暗いままで、リロイはテーブルに置かれている白騎士の鎧を見つめていた。


「リロイ…白騎士をやめたこと…後悔していますか?」


「…後悔しているかもしれません。だけど僕が守りたかった存在はゴールドストーン王国から出て行きますし、僕は自分を見つめなおさなければいけなかった。…もしかしたら僕はあなたをだしにしたのかな」


「そんなことありません。リロイ…私…あ、あの…待っていますから」


白いバスルームだけを羽織ったティアラは、勇気を出してリロイの背中に抱き着いた。

細くてたくましい背中はあたたかく、リロイがゆっくりと身体の向きを変えて向き合い、憧れの勇者様そのものの微笑で笑いかけられると、言葉に詰まってしまう。


「じゃあ僕もシャワーを浴びて来ます。…先に寝たら襲いますからね」


「え、ええ、ど…努力します…」


リロイがバスルームへ消えて行くと、ティアラは全身が映る鏡の前に慌ただしく立ってバスローブの紐を緩めて自身の身体を観察した。

ブラから肉がはみ出てないかとか、ちゃんと収まっているかとか、とにかく目を凝らして確認しまくった後、ベッドに潜り込んでリロイを待っているうちに、心臓が痛いほどに鼓動を打って身体を丸める。


「結婚前の王女がこんな…はしたない…!」


――だが、リロイがクリスタルパレスのリーダーに選ばれれば、自分はレッドストーン王国の王女ではなくなる。

ラスのように王女という立場を捨てて、自由に生きていけるのだ。


それはティアラにとっても未知の世界で、新たな可能性が開けているように見えて、瞳を潤ませた。


「ティアラ?まだ寝てませんよね?」


「り、リロイ…ええ、寝てません。ちょっと考え事をしていました」


バスルームから出て来たリロイもバスローブだけの姿で、金色の髪からは水滴が滴り、頬や首筋を濡らしていた。

それだけできゅんとしてしまったティアラは上半身を起こしてリロイを待ち受け、胸元から覗くたくましい胸に視線を集中させてしまう。


「考え事って…なんですか?よかったら僕に教えて下さい」


「あなたがリーダー選で当選したら…私は王女ではなくなります。そんな人生考えたことがなかったから…」


「まだ選ばれるかわかりませんよ。落選したら、僕がレッドストーン王国の王です。僕にできるかな」


「あなたなら大丈夫。リロイ…」


ベッドがぎし、と音を立てた。

リロイがベッドに腰掛けながら顔を寄せてくる。

ティアラは、ゆっくり瞳を閉じた。
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