魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクに抱っこされているとどきどきして…ふわふわしてしまう。

固くて引き締まった胸…腕…腰…

ラスがさわさわと触れるとぎこちなくコハクの身体が動き、頬を軽くつねられた。


「なんだよ…イタズラすんなよな」


「だって2年だよ?コーの馬鹿、私と会えて嬉しくないの?」


ぷうっと頬が膨れたラスはやはりラスで、随分大人っぽくなってしまってはいたが心はあの時のまま。

そしてコハクも、あの時のまま。


「嬉しいに決まってんだろ。それにチビ…すげえ綺麗になったぜ」


「ほんとっ?2年間ずっとコーのこと好きだったからかな」


さらっと言ってのけ、しかもにこーっと笑ったラスにむらむらが止まらなくなった魔王が上体を傾けて覆い被さろうとした時――


「あっ!コー、お部屋のベッドに花弁が沢山散らばってる!すっごく素敵!」


するっと腕を擦り抜けて部屋に駆け込んでしまい、そんな華麗なスルーも久々でつい顔がにやけてしまった魔王はラスを追って部屋に入った。


「ここまで来るの大変だったろ?どこも怪我してないか?」


「うん、してないよ。あのね、ヒキガエルさんとウサギさんとリスさんとインコさんとお友達になったの。それで燕さんにね…」


相変わらず口下手なラスが必死に道中の様子を話しながらローブを脱ごうとしていて、コハクが慌てて駆け寄るとその手を止めた。


「駄目!俺が脱がせるの!」


「自分でできるもん」


「だーめー!ていうか俺に脱がさせてください!」


――これまた相変わらずなコハクにくすくす笑いながら手を下ろすと、胸元で結ばれた革紐を外し、その下のサマードレスとラスの胸に出会ったコハクは――


「やべえ!なんだこれ!爆発する!!」


「コー、抱っこして」


ぴょんと跳ねて腕に飛び込むと、変な汗が止まらなくなった魔王はラスを抱き止めてわなわなしていた。



「コー、キスして…?“勇者様”のキス…」


「チビ…」



ベッドに座り、覆い被さられながらゆっくりと唇が重なり、みるみる激しいものへと変わる。


2年間――

この日を、待っていた。
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