魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
人数分のパンケーキを焼いたはずなのに、デスの皿にはさっき乗せたはずのパンケーキが消えていた。
「あら…?私…数を間違えたのかしら。ごめんなさい、焼いて来るわ」
「あー、いいって。こいつもう食ったんだ。おいこのやろ、チビの分だけは絶対食うなよ。あ、こら、生クリーム食うな!」
コハクの皿に大量に乗っていた生クリームの山に指を突っ込んで口に運んだデスの後頭部にチョップを食らわしたコハクは、そんな騒々しさにも一切動じずに美味しそうにパンケーキを食べているラスを見て怒りが吹っ飛び、優しく髪を撫でた。
「美味いか?でもきっと俺が焼いたパンケーキのが美味いと思うなー」
「ティアラ、これすっごく美味しい!ラズベリーのソースとっても美味しい!後で作り方教えてねっ」
「……魔王……無視された…」
「うるせえ、いちいち説明すんじゃねえ!」
デスにひそりと笑われてまたチョップを食らわすと、いじけたデスが膝を抱えて真ん丸になり、そんな光景を目を丸くして見ていたフィリアは、真向かいに座っていたグラースにひそりと声をかけた。
「いつもこんな感じなのかしら?」
「ああ、いつもこんな感じだ。あれは死神だが、魔王とラスの前ではその立場を捨てている。最近は城内でローブを着ていないんだ。少しずつ素顔を見せてくれるようになった」
「手が骨だから、それで死神だと気付いたけれど…伝承や本で伝えられているような恐ろしい存在でないことは確かのようね」
グラースとフィリアから注目されて背を向けて真ん丸になったデスの頭をよしよしとラスが撫でてやっていると、リロイがランニングから戻ってきた。
今度はそちらへ一斉に注目が集中したために汗を拭く手が止まったリロイは、ティアラと顔を見合わせた瞬間、ぱっと顔を逸らした。
「へぇー、なんで照れてんのかなー。理由を詳しく知りたいなー。昨晩は2人で何やってたのかなー。おっと、発音が違った」
「え、意味わかんない。コー、教えて」
「ら、ラス、それよりもフォーン王子はどうなったのかしら…。またこの城に来るんじゃ…」
ティアラが不安を口にすると、リロイは隣に座りながら細い肩を抱いて引き寄せた。
「また現れた時は、今度こそ僕がこの手であの男を斬ります。だから安心して下さい」
コハクはにやにやしながらラスを膝に乗せて口の回りについた生クリームを拭いてやりながら噴き出した。
毛髪が1本もなくなったフォーンが転がるようにしてグリーンリバーを出て行った姿を思い出して、またひとりで爆笑してラスに不気味がられた。
「あら…?私…数を間違えたのかしら。ごめんなさい、焼いて来るわ」
「あー、いいって。こいつもう食ったんだ。おいこのやろ、チビの分だけは絶対食うなよ。あ、こら、生クリーム食うな!」
コハクの皿に大量に乗っていた生クリームの山に指を突っ込んで口に運んだデスの後頭部にチョップを食らわしたコハクは、そんな騒々しさにも一切動じずに美味しそうにパンケーキを食べているラスを見て怒りが吹っ飛び、優しく髪を撫でた。
「美味いか?でもきっと俺が焼いたパンケーキのが美味いと思うなー」
「ティアラ、これすっごく美味しい!ラズベリーのソースとっても美味しい!後で作り方教えてねっ」
「……魔王……無視された…」
「うるせえ、いちいち説明すんじゃねえ!」
デスにひそりと笑われてまたチョップを食らわすと、いじけたデスが膝を抱えて真ん丸になり、そんな光景を目を丸くして見ていたフィリアは、真向かいに座っていたグラースにひそりと声をかけた。
「いつもこんな感じなのかしら?」
「ああ、いつもこんな感じだ。あれは死神だが、魔王とラスの前ではその立場を捨てている。最近は城内でローブを着ていないんだ。少しずつ素顔を見せてくれるようになった」
「手が骨だから、それで死神だと気付いたけれど…伝承や本で伝えられているような恐ろしい存在でないことは確かのようね」
グラースとフィリアから注目されて背を向けて真ん丸になったデスの頭をよしよしとラスが撫でてやっていると、リロイがランニングから戻ってきた。
今度はそちらへ一斉に注目が集中したために汗を拭く手が止まったリロイは、ティアラと顔を見合わせた瞬間、ぱっと顔を逸らした。
「へぇー、なんで照れてんのかなー。理由を詳しく知りたいなー。昨晩は2人で何やってたのかなー。おっと、発音が違った」
「え、意味わかんない。コー、教えて」
「ら、ラス、それよりもフォーン王子はどうなったのかしら…。またこの城に来るんじゃ…」
ティアラが不安を口にすると、リロイは隣に座りながら細い肩を抱いて引き寄せた。
「また現れた時は、今度こそ僕がこの手であの男を斬ります。だから安心して下さい」
コハクはにやにやしながらラスを膝に乗せて口の回りについた生クリームを拭いてやりながら噴き出した。
毛髪が1本もなくなったフォーンが転がるようにしてグリーンリバーを出て行った姿を思い出して、またひとりで爆笑してラスに不気味がられた。