魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイがリーダー選に立候補して以来、人々はリロイの噂で持ちきりだった。

コロニーで生活していた時からリロイは親身になってくれたし、ティアラは常に傍に居たので、そういう仲じゃないかとは思っていたが…実際にはティアラには婚約者が居たし、フォーンの悪評と風体が広まると共に、リロイをリーダーにと望む声はもっと大きくなっていた。


「投票は公正を期すために住民のみの投票で1票のみと定められています。で、投票は明日だそうです。フィリア女王陛下…明日まで滞在というわけにはいきませんか?」


「ええ、そうさせて頂くわ。どちらにしろ、あなたはティアラの夫となるのだし、カイにもそう伝えておかなければね」


朝食を終えてフィリアの部屋に招かれたリロイは、フィリアの前で片膝をついていた。

白騎士としての立場を捨てた身としては、以前よりもっと立場は下になったので、常に膝をついて話さなければならない。

だがフィリアはそれを気にも留めずにリロイの手を引っ張って立ち上がらせると、表情が曇ったリロイを笑った。


「カイがどんな反応をするか心配なのね?あなたが白騎士をやめること自体は知っているのでしょう?」


「…はい、そうなんですが…陛下には反対されていましたから…」


「きっとラス王女からも口添えがあるわ。…もう彼女のことはいいのね?」


「ラスのことですか?…ええ、ラスには影が居ますし、僕は長い間妄執に憑りつかれていましたが、ティアラがそれを払ってくれたんです。彼女は本当に…天使のような女性です。僕はティアラを幸せにしてやりたい」


心からの本音だと受け取ったフィリアは、緩く編んだ長い三つ編みの髪を揺らして立ち上がり、窓際から美しい街並みを眺めた。

ここをあの魔王が作ったこと自体にも驚嘆していたが、それよりも何よりも…最愛の娘が最愛の男と結婚できることが本当に喜ばしく、つい瞳が潤んでしまった。


「…私は愛しい人と一緒になれなかったけれど、どうかお願い。ティアラを幸せにしてあげて下さいね。カイには私からも手紙を飛ばしておくわ。明日の投票…あなたが選ばれることを願っています」


「ありがとうございます、フィリア女王陛下…」


フィリアの手の甲にキスをしたリロイは、すぐさま身を翻してティアラの居る部屋へと脚を向けた。

愛しくて仕方のない女性の元へと――
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