魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
グラースはラスが眠るまでいつも傍にいる。
面会を求めるリロイには一切会わせず、時々やって来るラスの父のカイや母のソフィーには会わせるが…
ラスは目も合わせず口数も極端に少なかった。
カイやソフィーはそれを嘆き、変わってしまった娘をどうにか元気にさせようと四苦八苦していたが、全て失敗に終わっていた。
――ベッドに寝かせ、寝息が聴こえたのを確認するとグラースは部屋を出て、そして待ち構えていた男を見て鼻で笑った。
「物欲しそうな瞳をしている」
「…ラスに会いたい。会わせて下さい」
「ラスがお前とだけは絶対に会わないと言っている。だから会わせることはできない」
…ラスを連れてゴールドストーン王国へ戻ってきたリロイは、“勇者”として国民からもカイたちからも歓迎された。
だが、魔王城から王国へ着くまでの道中ずっとティアラの魔法で眠らされていたラスを見た途端…カイとソフィーの顔はみるみる曇った。
危惧していたことが起こってしまったからだ。
「僕は魔王に最期にラスのことを頼まれました。僕がラスを導きます」
「それをラスに言えるか?最愛の男を殺したお前の手をラスが選ぶとでも思っているのか?」
グラースは相変わらず無表情だ。
その顔は気高く、険しく、怒鳴られるよりも叱責されるよりも殊の外堪える。
ぐっと黙り込んだリロイの心情が複雑なことはわかっているつもりだが、グラースは顎で隣の自室を指すとリロイを連れ込んだ。
「魔王は最後に消えたと言っていたな。海に落ちたのか?」
「…いえ。何度も言いましたが、倒れていたんです。一瞬目を離したらもう姿はなかったんです」
「生きている可能性もある、と?」
――コハクは完全体に戻り、人として何ら変わらなかったが…魔法剣は確かに威力を発揮し、命を奪ったように見えた。
完全体に戻る前は魔法剣で刺したとしても命は奪えなかっただろうが…
あの時コハクは自分に刺される覚悟で命をさらけ出していた。
あの後…ラスとコハクを本当に祝うつもりでいたのに。
「どうして僕はあんなことを…」
掌を見つめても、この2年間答えは出ない。
面会を求めるリロイには一切会わせず、時々やって来るラスの父のカイや母のソフィーには会わせるが…
ラスは目も合わせず口数も極端に少なかった。
カイやソフィーはそれを嘆き、変わってしまった娘をどうにか元気にさせようと四苦八苦していたが、全て失敗に終わっていた。
――ベッドに寝かせ、寝息が聴こえたのを確認するとグラースは部屋を出て、そして待ち構えていた男を見て鼻で笑った。
「物欲しそうな瞳をしている」
「…ラスに会いたい。会わせて下さい」
「ラスがお前とだけは絶対に会わないと言っている。だから会わせることはできない」
…ラスを連れてゴールドストーン王国へ戻ってきたリロイは、“勇者”として国民からもカイたちからも歓迎された。
だが、魔王城から王国へ着くまでの道中ずっとティアラの魔法で眠らされていたラスを見た途端…カイとソフィーの顔はみるみる曇った。
危惧していたことが起こってしまったからだ。
「僕は魔王に最期にラスのことを頼まれました。僕がラスを導きます」
「それをラスに言えるか?最愛の男を殺したお前の手をラスが選ぶとでも思っているのか?」
グラースは相変わらず無表情だ。
その顔は気高く、険しく、怒鳴られるよりも叱責されるよりも殊の外堪える。
ぐっと黙り込んだリロイの心情が複雑なことはわかっているつもりだが、グラースは顎で隣の自室を指すとリロイを連れ込んだ。
「魔王は最後に消えたと言っていたな。海に落ちたのか?」
「…いえ。何度も言いましたが、倒れていたんです。一瞬目を離したらもう姿はなかったんです」
「生きている可能性もある、と?」
――コハクは完全体に戻り、人として何ら変わらなかったが…魔法剣は確かに威力を発揮し、命を奪ったように見えた。
完全体に戻る前は魔法剣で刺したとしても命は奪えなかっただろうが…
あの時コハクは自分に刺される覚悟で命をさらけ出していた。
あの後…ラスとコハクを本当に祝うつもりでいたのに。
「どうして僕はあんなことを…」
掌を見つめても、この2年間答えは出ない。