魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
クリスタルパレス王国――カイの協力により加盟国となった国の新王となったリロイは、完璧に復元された城の私室で朝を迎えた。

もちろん隣にはティアラが寝ていたのだが、緊張してなかなか眠れずに2人ベッドの中でずっとだらだら過ごしていた。

リロイとティアラは静かな時間を好み、コハクとラスのようにきゃっきゃと騒ぐことはあまりないが、あまり会話を紡がなくても苦ではないし、それに今は2人の時間を持つというよりも、この王国をどうやって大きくかつ皆が安心して暮らせるような街作りができるかに重きを置いていた。


「結局全然眠れなかったね。このベッドのせいかな」


「ふふ、じゃあ小さめのに替えてもらう?リロイ、見て…綺麗…」


身体を起こしたティアラが窓辺に寄って街を指すと、あたたかいオレンジ色の朝陽が街に降り注いで神々しく輝いていた。

各王国はそれぞれ騎士団を作ることが習わしであり、あちこちからの移民だらけのこの国を守りたいと思ってくれる人が居るかどうかもまだわからないが、早急に騎士団を作る必要がある。

ラスが人形と成り果てていた2年間の間に、憂さを晴らすために魔物を狩って腕を上げたリロイだからこそ、できることもあるはずだ。


「ティアラ…まだまだやるべきことが沢山ある。あなたに協力してもらわなければならないこともきっと沢山…」


「わかっています。私が王女だった時に得た知識は、全部あなたに教えるわ。不安でしょうけど、それは国民も同じ。私は…あなたが隣に居てくれれば不安なんか感じないから」


出会った当初はつんつんしていて素っ気い態度を取っていたティアラは、今や王妃として隣に居てくれる。

リロイにとってはとても頼もしい存在だし、何よりティアラを想い、想ってくれる気持ちは日々鮮やかに胸を染め上げていく。


「さあ、着替えようか。今日はあなたの母国に凱旋する日。僕は言わばレッドストーン王国からあなたを攫った悪い男だから、みんなにいじめられるかも」


「いじめられたら私が庇ってあげるわ。だから安心して」


くすくす笑い合ってキスを交わそうとした時――爆発したかのような勢いでいきなりドアが開いた。

思わずリロイがティアラを背中に庇って身構えたが、そこに立っていたのはラスを抱っこしているコハクで、これからこうして突然訪問してくるであろうコハクとラスに慣れなければとリロイは肩を竦めた。
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