魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
こんなにも激しく求められたのは、はじめてだったかもしれない。

いつもは壊れ物を扱うかのように優しくしてくれていたが、今夜は…違った。

優しいことに変わりはないけれど、逸る気持ちを抑えられないのか、少し乱暴に扱われて、だが逆にそうされたことでまたきゅんとなったラスは、息も絶え絶えになりながら、コハクの背中に爪を立てていた。


「コー…っ、赤ちゃん、できちゃう…!」


「年子じゃなくて同い年の子供ができるかもな。もっとしたいけど…やめとく。ほんとにチビが壊れてしまったら大変だし」


快楽の虜になって正気を手放した女を数多く知っている。

ラスには絶対そうなってほしくないので、身体を起こしたコハクは額に玉のように浮かんでいる汗を拭ってやりながら、首筋にまたキスマークを刻み込んだ。

もう首筋は花弁のような痕が数えきれないほどついている。

もちろんラスはまだそれを確認できていないが、後でこっぴどく怒られることをわかっていながらも、コハクは自身を止めることができなかった。


やっと…

本当の意味で、ラスが手に入った。

だが不死になったとはいえ、ラスを傷つける者は絶対に許さない。

血の一滴すら、流すことは許さない。


「疲れちゃった…。腰痛い…お尻痛い…」


「ごめんって。沢山イタズラもできたし、数日は人とも会えない有様にしちゃったし!怒られてもいいし!カイや小僧たちには不死の魔法が成功したことを手紙に書いて送っておく」


隣に寝転がったコハクの腕の中に転がり込んだラスは、うとうとしながらまた首筋に顔を埋めてきたコハクの頭をぺちんと叩いた。

この男とは本当に毎年子供を作る気でいるかもしれないと思いつつ、ベビーのように可愛い子供に恵まれるのであれば毎年でもいいとまたラスも思っていた。


「コー…私のこと…好き?」


「めっちゃ好き。超愛してる。でないと不死の魔法をかけようなんて思わねえよ。俺の1番は永遠にチビだ。で、今んとこベビーが2番で、女の子が生まれたら順位変動で女の子が2番!」


「じゃあ女の子は生まないもん。1番も2番も3番も私じゃないと駄目。コーの馬鹿」


背中を向けてむくれてしまったラスのなめらかな白い肌に唇を這わせたコハクは、強く強く、ラスに誓った。



「ずっとずっとチビが1番だ。チビん中でも俺がずっとずっと1番でないと駄目だからな。わかったか?わかったら誓えよ。俺しか愛さねえと」


「うん、わかった。コーが1番だよ。2番目とか3番目はなくって、ずっとコーが1番なの。私もコーのことすごく好き。超愛してるよ」


「へへっ、なんか…照れる!も、もういいって!このやろ、照れさせんなよな!」


「きゃーっ!コー、くすぐったいっ!」



ベッドの中でもみくちゃになりながら、時を忘れて笑い合い、愛し合った。

これが永遠に続くのだということを噛み締めて、これ以上はないというほどに幸せな気分になった。


そして、数年の時が流れる――
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