魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
顔の横に両手を添えてすやすや眠っているエンジェルは、小さな頃のラスにそっくりだった。

シーツなど全て淡いピンク色に統一した天蓋つきの子供用ベッドで幸せそうに寝ている姿を見るだけで幸せなコハクは、顔を寄せて小さな頬にキスをした。


「可愛すぎる…!どうしよう、エンジェルは絶対チビみたいな美人になって引く手あまたになって男共に言い寄られてしまう!」


「コー、しーっ。大きな声出すとエンジェルが起きちゃうから。ねえコー、それよりも…あっちの方が気にならない?」


ラスが指差して指摘した方角は部屋の隅で、三角のオレンジ色のテントが張られていた。

ここは小さな勇者たちが“秘密基地”と呼んでいる場所で、この中に居る時はけして中に入ってはならないというルールがある。

その秘密基地がもぞもぞと動き、そっと近づいてみると、中から話し声が聞こえた。



「魔王に馬鹿にされたままで終わるわけにはいかないぞ。明日は俺が剣で攻撃するから、お前は魔法で援護しろ」


「でも…もし本気になられたら僕たちなんかこてんぱんにされちゃうよ」


「世界一可愛くて綺麗なママとその次に可愛い妹を魔王から守ってやるんだ!お兄ちゃんの言うことが聞けないのか?」


「うーん…うん、わかった。明日は僕も頑張る!」



中では明日の作戦が練られていたらしく、ラスが噴き出しそうになって慌てて両手で口を覆うと、コハクは兄弟がパパと呼んでくれないことにまた不満を抱いて瞳を尖らせた。


「ちぇっ、あいつらに魔王って呼ばれたくねえんだけど」


「じゃあパパって呼んでもらえるようにこっちも作戦練っちゃう?」


そっと部屋を出て廊下を歩きながら何気なくそうラスが提案すると、コハクは急に閃いたような顔をしてラスの肩を抱いて赤い瞳を輝かせた。


「じゃあいっちょこっちも作戦立ててあいつらを懲らしめてやるかー」


「コー、やりすぎないようにね。あの子たちまだ小さいんだから」


「わかってるって。じゃあドラあたりに協力させっかなー。ふふふー、楽しみになってきたぞ!」


ラスと共に中庭に出ると、地響きを立ててごろごろ床を転がって日向ぼっこしているドラちゃんを発見してラスが声をかけた。


「ドラちゃん、ちょっと協力してほしいことがあるんだけど」


『ベイビィちゃんの頼みならなんでも』


コハクとラスはそろってにやっと笑うと、小さな勇者たちが奮闘する姿を想像して、萌えていた。
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