魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
お風呂に入ってほかほかになった家族一行はその後ラスの作ったパンケーキと紅茶を飲みながら、楽しい一家団欒を過ごした。

大好物のパンケーキには生クリームやジャムや金色の花の蜂蜜がたっぷり乗せられていて、残り2枚になると、例の微笑ましい光景が見られた。


「はい、エンジェルは1枚。俺たちは半分こ」


エンジェルに1枚を渡し、小さな勇者たちは1枚を半分に分けて食べ合う。

これはお菓子が2個になってしまうと必ず見られる光景で、コハクとラスは口元がにまにましてしまいながら仲睦まじい兄妹を見守った。


「ねえ、今夜は久々にみんなで一緒に寝よっか。ママが手を繋いであげる」


「ほんとっ?やったー!一緒に寝る!寝るー!!」


「えーっ!?俺はチビと2人が………まあ今日位いっか。エンジェル、パパが抱っこして寝てやるからな」


「うん!パーパの抱っこ!抱っこ!」


興奮した子供たちはパンケーキを食べ終わった後、ベッドの上で飛び跳ねて喜びを爆発させる。

兄妹3人になってからは子供部屋で寝るようになったのだが、それでも時々こうして両親と一緒に寝る機会があり、小さな勇者たちはいつもなら大人ぶってそれを拒否していたが、今日は違う。

ドラちゃんとデスに攫われたラスとエンジェルを救い出したコハクの戦いっぷりも見れたし、コハクとラスがあの火山までやって来た自分たちを沢山誉めてくれた。

今日位子供らしくあってもいいじゃないのだろうかと話し合った小さな勇者たちは、思う存分歳相応の子供のようにはしゃいで妹と部屋を駆け回った。


「そろそろ寝るぞー。いびきなんかかきやがったらベッドから落とすからな」


「はーい!」


すぐさまエンジェルが横になったコハクの腹の上に乗ってべったりくっつくと、ラスが小さな頃の時のことを思い浮かべたコハクは、小さな身体を抱きしめてため息をついた。


「こんな可愛かったら絶対将来はプロポーズする男が絶えねえんだろうなあ…。チビん時もそうだったし、俺は絶対認めません!」


「コーったら、またそれ?ほら勇者くんたち、おいで。ベッドから落ちないようにね」


うきうきしながらラスの両隣に寝そべった小さな勇者たちは、いい匂いのするラスに思う存分抱き着きながら、将来は絶対ラスみたいなお姫様と結婚しようと決めていた。


「パーパ、なでなでして」


甘えてくるエンジェルのわき腹やお腹をくすぐって可愛い笑い声を上げさせたコハクは、ラスと小さなキスを交わすと、照明を消して家族一家で眠りについた。
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