魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
こうしてデスと一緒に寝ると、翌朝コハクにものすごく怒られるのだが、やめられない。

ちなみに怒られるのは自分ではなくてデスなのだが…庇うと余計に怒るので、ラスがいつも仲裁に入っていた。

すると喧嘩はすぐに収まり、コハクが渋々と言った態でなんとか溜飲を下げる。


いつもそれをつぶさに観察していたエンジェルは、小さいながらも、女だった。


「私も…マーマみたいに、綺麗になれると思う?」


「………うん…多分……」


「マーマみたいになれたら…私のこと…好きになる?」


「…………」


黙ってしまったデスの顔を手探りで触って頬にちゅっとキスをすると、いつも何を考えているのかわからないこの死神が、何を考えているのかを悟った。


「今…マーマのこと考えたでしょ。マーマはパーパのなんだから…駄目ぇ…」


「………ラス…綺麗……。……変わらない…」


“何が変わらないの?”と問いたかったのだが、デスの腕に抱かれていると本当によく眠れてしまうエンジェルは、真っ白過ぎる頬にもう1度キスをして、瞳を閉じた。


「大きくなったら…チューしてくれる…?」


「………ラスみたいに…なれたら…」


「うん…頑張るぅ……すぅ……」


眠ってしまったエンジェルが腕に抱き着いて離れないので、仕方なくそのままにしておいたデスは、ラスをミニチュアにしたようなエンジェルを見つめて綺麗な唇の口角を少しだけ上げて微笑んだ。


この女の子は…間違いなく綺麗になるだろう。

何せあのラスにそっくりなのだから、綺麗にならないはずがない。

今こうして慕ってくれているが、大きくなれば新しい世界を見つけて、出会いを経験して、離れてゆくのだ。


「………寂しい…のかな……」


まさかこんな幼女に妙な想いを抱いているわけではないが、大きくなれば別の問題なのだろうか。


眠っているエンジェルは本当に天使のようで、無意識のうちに腕に抱き込んで眠ってしまったデスは、翌朝魔王の殺気で目覚めた。


「てめえ…エンジェルは俺と寝てたはずなのに!なんでここに居るんだよ!」


「………俺の…せいじゃない……」


「エンジェル、またデスのとこに行っちゃったの?ごめんね、迷惑じゃなかった?」


仁王立ちして今にも襲い掛かってきそうなコハクの背中からひょっこり顔を出した綺麗なラス――

出会った頃と変わらない想いを抱きながらも、エンジェルがラスのように美しくなれば、きっととても楽しくて嬉しいのだろう、と思いを馳せながら、エンジェルの身体を優しく揺すって起こした。
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