紅い月
かさり、と黄色に染まった銀杏が音をたてる。
まるで、黄色の絨毯が敷かれているようだ。
朝、学校へ登校する時に近くの家の人が道を掃いていたはずなのに、と八重子は思った。
「八重子さん、あなたこの間の日曜、映画を見に行ったのではなくて?」
千代の言葉に八重子は驚いた。
「ええ、見に行ったわ。どうしてご存じなの?」
千代は悪戯っ子のように笑みを浮かべる。
「ふふ。こうみえて私、千里眼があるの」
せんりがん。
八重子は口の中で小さく呟いた。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた八重子を見兼ねて、千代が言葉を続ける。
「やあねぇ、そんな顔なさらないで。冗談よ、冗談」
千代はけらけらと笑った。
「もしかして、千代さんも映画館にいらしたの?」
八重子が尋ねる。