恋愛ウィーク
【金曜日】



「プレゼンテーションの相談なんですが…」

「うん」

「第二会議室をお借りできないかと」

「いいですよ。いつ?」

「来週の金曜でどうでしょうか」

「いいよ」

「ありがとうございます」

「用件はそれだけ?」

「…?…はい」

「じゃあちょっと質問いいかな」

「はい」



「君だけじゃなく、後ろで聞いてる人達もね」




「…え?」

「今回の企画はグループで立ちあげろと俺は言った筈だ。

そしてグループでまとめろと。

なのになぜ、

彼女だけが企画案を練り、

資料を集め、

企画書を作成したんだろう。

さらにプレゼンテーションを構築し

場所までたったひとりでおさえて

セッティングしているんだろう。

そしてなぜ彼女はひとりぽつんと昼食をとる羽目になっていたんだろう。

俺はそれが不思議でならない。

教えてくれないかな後ろの人々。

俺がトイレの芳香剤だったことが、

君たちに何の関係があったのかな?」



「と…遠野さ…」



「……………」


「……………」



「……逃げたね。
彼女たち。バカだな。顔が割れてないとでも思ってるのか」

「……………」

「君が俺を芳香剤だと言った次の日から稚拙ないじめが始まったのを知っている。
それを行いはじめた彼女たちが俺のうわべをチヤホヤしている存在なことも知っている。
そんな人達による虐げを誰にも告げず君が頑張っているのも知っていたから何も言わなかった。

でも頼ってほしかったよ。

俺は君の上司だから」

「……………」

「俺、言ったよね。
『俺が君にかまうことによって、君、何か困ってるの?』って。

なんで
言わなかった」


「……………」


「言え。なんで言わなかった」





「………遠野さんが傷つくからです」






「……は?」
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