My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「沙亜矢ちゃん、お水くれる?」



「あ、はい。行きます」



お客様に呼ばれ、ピッチャーを持って駆け足。

お水を注ぎ、食後の薬を出すのを手伝ってる間、光希ちゃんは楽しそうに愛娘である希ちゃんの話を加古さんにしてる。



「下げますね」



お兄ちゃんと加古さんも食べ終えてた為、食器を片付け、お兄ちゃんの分のコーヒーを淹れる。

18時半から19時半までの暇な時間。

光希ちゃんの高らかな笑い声を聞きながら、チケットを整理したり、グラスを磨く。

オーナーは早く仕事して欲しそうな顔をしてるけど、私には自分の事のように嬉しかった。

私の恋は、叶わないんだから。

ーーチリンチリーンッ

19時になり、鳩時計がポロポロと鳴いてる中、ドアが開いた。

お兄ちゃんたち以外のお客様は居らず、自由に座って貰えば良い。

私は「いらっしゃいませ」と出迎えながら、作業を止めて水をグラスに注ぎ、後ろを追おうとした。



「こんばんは」



「……こんばんは」



しかし、いつもより早く現れた40代半ばの小太りサラリーマンの常連さん。

私の事が好きらしい、厄介な人。



「今日も会えて嬉しいよ」



「……どうもっ」



嬉しくない、寧ろ迷惑としか言いようがない。

彼が腰掛けると、注文だけ聞いて即座にカウンターに戻った。
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