My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「アメリカンとハムサンドです」



「いつものね」



オーナーもあの人の事は知ってる。

従業員の中で、知らない人は居ないかも知れない。



「沙亜矢、私が運ぼっか?」



「どうせいちゃもん付けられるから良いよ」



私が運ばない時は、懲りずに“態度が悪い”とか、“髪の毛が入ってる”とか、ありもしない事を言う為、結局は私が運ぶしかない。



「沙亜矢」



「はい」



溜め息を吐いてると、お兄ちゃんに呼ばれた。

一番テーブルに急ぐと、コーヒーのおかわり。

カップを下げ、新しいマグカップにコーヒーを注ぐと、光希ちゃんがハムサンドを届けてくれたらしいけど、またキレてる。



「睨んだだろ」



「睨んでません」



…はぁ。

私は何度も何度もわざとらしく溜め息を吐きながら、お兄ちゃんと加古さんにコーヒーを運ぶ。

横を見れば、私を指名する彼に「ここはキャバクラではありません」と、光希ちゃんは冷静に対応してる。



「客に指図するのか」



「指図ではなく、正論を言ってます」



「何だ、アレ」



「私が好きらしくて……」



お兄ちゃんに事情を説明すると、加古さんが「あの客もダサい」と呟いた。

時々、口調が光希ちゃんよりキツい人。

テレビドラマで見るヤンキーみたいだ。

…もしや本当に“ヤンキー”とか……?
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