My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
私が苦笑する中、加古さんが「彼氏!」とお兄ちゃんを呼んだ。

お兄ちゃんは顔を引き攣らせながら立ち上がり、私の肩を抱いた。



「沙亜矢ちゃん、本当なのか?」



嘘も方便。

そう考えた私は、「はい」とだけ答えた。

これで諦めてくれたら助かる。

お兄ちゃんには、利用して申し訳ないけど。



「……許さない……。お、覚えとけよッ!!;;」



…何をだろうか;;

お店を出て行く背中を見ながら、そう思った。

恥ずかしさを隠すようにお兄ちゃんからさっと離れ、光希ちゃんに近付いた。

光希ちゃんはニコッと笑い、テーブルを片付けた。



「今日の私たち、慎之介のせいで不幸だわ」



「一目惚れしてもか?」



「お父さんには、関係ないでしょっ!」



私もこんなお父さんが欲しかったな。

言いたい事が言えるけど、仲良しなお父さん。

あの人とは描けない、理想が私にだってある。

いつかそんな家族を作りたい。

お兄ちゃんと築けたら、幸せだろうに。

私たちは兄妹になってしまった。

夫婦になんて、なれないんだ。



「沙亜矢、どうした?」



「ううん。何でもないです」



私は誤魔化しながら、軽く掃き掃除をした。




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