My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
家に帰り、お兄ちゃんにだけ「ただいま」と告げた。

母親は夜勤の為、晩御飯は作りおきされたカレーだった。

少量だけ食べ、キッチンのシンクに浸けられたままの2人が使った食器も一緒に片付け、部屋に入る。

産婦人科で貰ったピルを、母親にバレないように使ってないサプリメントケースに入れ換える。

ここまでして、自分でも馬鹿だと思う。

でも、しないと過ちを繰り返しそうで嫌。



「沙亜矢?入るぞ」



「あ、うん」



お兄ちゃんの声が聞こえて、私は慌ててベッドの下にケースをしまった。

お兄ちゃんが下の段だけど、後で移せば良い。



「お前さ、進路は決めたのか?」



「うん。一つ、二次募集がある会社を勧められたから受けてみる。受かったら話すよ」



本当は、面接すら受けるかもわからない。

新学期までに気が変わるかも知れない。

もう受かっても、蹴るかも知れない。

変なところで自分を甘やかしてるよね、私。



「就職したら、この家を出ろ」



「うん……」



「そしたら、俺も見合い相手と結婚するから」



「……え……?」



…“結婚”……?

お兄ちゃんは、いつお見合いしてたのだろう。

固まる私を他所に、「ちゃんと考えろよ」と、ベッドの向こう側へと行ってしまった。
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