My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「亜矢子ーアヤコーさんが夜勤だって事、忘れてた。急いで帰ったら居ないし、マジで焦った……」



私の頬に手を当て、温めてくれようとしてるのがわかる。

お兄ちゃんの手を両手で掴むと、血行が回復して、血色も戻って来た。



「帰ろう」



「……うん。わざわざ来てくれて、ありがとう」



本当は帰りたくない。

でも、迷惑は掛けたくないと震える足を動かす。

自宅は市営の集合団地。

2LDKと狭く、私はお兄ちゃんと同じ部屋。

仕切りの代わりの二段ベッドが部屋の真ん中に鎮座し、それぞれ相手側のゾーンにカーテンがあるだけで、プライバシーなんてあるようでない。

父親はリビングには居たけど、私は目も合わさず部屋着に着替えてからお風呂場に向かった。

シャワーで入念に体を洗い、リビングに忘れてた鞄を手に部屋に戻ろうとすると、ファスナーが開いて居た。

テーブルには新しい焼酎。

鞄から財布を出して確かめれば、携帯代用に銀行で引き落として来た5千円と、お小遣いがなかった。

小銭までもが。



「どうした?沙亜矢」



「… …何でもないっ」



ここに忘れた私が悪い。

自業自得。

これで三度目で、学習してなかったせい。

明日、また銀行かコンビニに行けば良いんだ。



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