My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
―龍児 SIDE―



取引先で知り合った、信頼の置ける加古さん。

昔は高校の番同士として会ってた人。

呼び出された時は、沙亜矢への気持ちに気付いてなかった。

指定されたファミレスに行くと、何故か沙亜矢のバイト先の子。

光希ちゃんと、その娘が居た。



「急にお呼び立てしてすいません。せっかくのお休みなのに」



「それは良いんですが、何かあったんですか?」



2人が一緒に居る事もさることながら、俺は沙亜矢が持ってたであろうピルが気になる。

何故、あいつが持ってるんだ。

付き合ってるヤツが居るとも思えないし。

今の俺に、2人の話を聞く余裕はあるだろうか。



「いきなりですが、沙亜矢は今、私の母親と病院に行ってます」



「……“病院”?」



確かに昨日と今日、沙亜矢は元気があるようには見えなかった。

しかし、親父が居るからだと思ってた。

家ではいつも浮かない顔してる。

あいつは気付いてないが、綺麗な顔立ちをしてるから周りは何も言わないが、見た目は相当暗い。



「あの子は、3年も前から藤森さんのお父さんからレイプされてるんです。それで妊娠をしてしまって……。今、堕胎しに行ってます」



「…………」



…嘘だろ……?

固まる俺を他所に、光希ちゃんは悔しそうな顔で言い切った。

親父への苛立ち。

沙亜矢を思うと、懺悔ばかりが込み上げる。

何で、もっとちゃんとあいつを見てやれなかったんだろうか。

沙亜矢を苦しめたのは、親父だけじゃない。

――俺もだ。
< 32 / 74 >

この作品をシェア

pagetop