My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
部屋の内装も、ドラマで見た以上のもの。

ダブルベッドに、カラオケのセット。

テレビも大きくて。

ガラス張りのお風呂はジャグジー付きで、薔薇の花びらが浮いて居た。



「沙亜矢。こっち」



お兄ちゃんに呼ばれ、探索を中止してソファーに座った。

温くなったココアが入ったペットボトルと、鞄をテーブルに置くと、いきなり抱き締められた。



「お兄、ちゃん……?」



「違う。今はお前のお兄ちゃんじゃない」



戸惑いがちに呼ぶと、さっきまで暗いムードだったのに、少し拗ねた。

年上ながら、可愛いと思ってしまった。



「どうしたの?龍児」



「もう俺、仕事辞めてぇ……」



投げ槍に言った龍児。

緩んでた頬は固まり、お兄ちゃんの腕を掴んで離した。



「そんな事、初めてじゃない?新人の時からどんなに忙しくても、そんな事は一度も……」



「俺は沙亜矢としか、もう先が見えないんだ。なのに、あいつら」



お兄ちゃんの口調からして、彼女さんとの事。

彼女さんは仕事に関係する人だと、察した。

私の存在が、お兄ちゃんの将来を揺るがしてるのかも知れない。

…でも、私……。

離れたくない。

子供みたいな事は言ってられないとわかるのに、離したくない。
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