My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
不安を隠せないまま龍児を見ると、私がしたキスとは違う。

深くて、何とも激しい口付けをされた。

苦しくても、離してくれない。

どこまでも、私を溺れさせるようなキス。



「沙亜矢…」



「……んッ――……」



龍児は今、何を考えてるだろう。

辞めるしか、方法はないのだろうか。

無理に仕事を続けてとは言えないけど、嫌いでもないのに。

そんなの、もったいないんじゃないの?

世の中には、私みたいに本当にやりたいのかわからない、条件だけで就職した人間も居る。

少しでも楽しくて、遣り甲斐があるなら、続けるに超したことはない筈。

キスを終え、私は呼吸を整えながらビールを取りに行くお兄ちゃんを見た。



「何だ?」



「いや、何でもない」



龍児は変なところで頑固。

今は何を言っても、通じないかも知れない。

来る前にコンビニで買ったおにぎりを手に、龍児の肩に凭れて溜め息。

今はどうであれ、兄妹と過ごして来た時間は無駄ではない。

今は龍児が冷静になるのを待とう。

下手に何かを言って、嫌われるのもごめんだ。





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