My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「本来は関係者以外は立ち入り禁止ですが、長田がフライト前に利用してる喫茶室があるんです。ご案内させて下さい」



「ありがとうございます……!」



感激して、今から泣きそうになる。

ついて行くと、セキュリティが万全の別棟に案内された。

最上階の喫茶室は、滑走路が見渡せて。

様々な航空会社の人が利用してると、制服を見てわかる。



「どうぞこちらへ」



窓際の席に誘導されると、カウンターからコーヒーを持って来てくれた。



「あ、お金……」



「大丈夫ですよ。もうすぐおみえになりますので、お飲みになりながらお待ち下さい」



本当に優しい人。

こんな人が、私の先輩になるんだ。

コーヒーを飲みながら、滑走路を見下ろす。

緊張のあまり、後ろを振り向けない。



「……君が、沙亜矢か?」



けど、背後に気配を感じた刹那、名前を呼ばれた。

私はここに来て、名を名乗って居ない。

時間をやたら掛けて振り返ると、写真に載ってた人、その者。



「お父、さん……?」



パイロットの黒の制服。

袖口には、機長を示す四本のライン。

荷物は入り口に置くシステム。




「沙亜矢なんだな……!」



避けられるとも思ったのに、お互いにうるうるとして、瞳が揺れた。

荷物がなかったお陰か、父親は私に駆け寄るなり、頭や頬を撫でて来た。

見上げると、目元が自分に似てる気がした。

親子だと、100%確信する事が出来た。

…この人が、私のお父さん……。
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