My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「どうしようか。フライト前より緊張するよ」



コーヒーを取りに行き、戻って来た実父。

マグカップを持つ手に、指輪がない。



「あれから16~7年も経ったけど。会えて嬉しいよ」



パイロットの制服を着こなす姿は、凄くカッコいい。



「これから、フライトですか?」


「13時からブリーフィングして、14時にはパリへ行く。また会えるなら、土産を買って来るんだが」



「はい。また会って、話したいです」



実父は私に休みの日や住所を教えてくれた。

今も独身で。

私が持って来た写真と同じ物が、胸ポケットにしまってある事まで。



「沙亜矢の身の上話は、帰ってからちゃんと全部聞くから。4日後、マンションでな?」



「気を付けてね、お父さん」



「沙亜矢も気を付けて帰りなさい」



ロビーまで見送って貰い、私は実父と別れた。

何度も振り返り、手を振れば応えてくれる。

優しい人。

でも、忙しくて母親が寂しかった気持ちはわからなくもない。

会わなかった16年間、私のお父さんで居てくれて良かった。

会いに来て良かった。

親子に産まれた事。

再会が出来た事、凄く凄く感謝してる。

4日後は、もっとちゃんとした父と子として会えたら良いな。




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