My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
引っ越しは、高校の事も考えて卒業式の翌日に決まった。
父親はかなり渋ってたけど、姓だけは先に長田に戻り、私は藤森姓から抜けた。
それだけでも、藤森の父親は大人しくなるだろうと思う。
今日はその事についても、実父が父親に話に来るみたい。
それだけでは済まないだろうけど、もう私は実父と暮らす事を決めたから。
父親に怯える事のない生活を選んだ。
家族になった時の優しさを、忘れたわけではないけれど。
「沙亜矢?彼が来たわよ」
「うん」
部屋で待機してると、母親が呼びに来た。
リビングでは、実父とお兄ちゃんが話していた。
「沙亜矢、元気だったか?」
実父は笑顔で私を見てる。
父親の表情は怖いけど。
「藤森さん。今まで長い間、沙亜矢がお世話になりました。ご存知の通り、沙亜矢は長田の名に戻りましたので、卒業までの期間、よろしくお願いします」
「ハッ!そりゃあご丁寧に」
父親は実父を鼻で笑い、焼酎の瓶に手を伸ばした。
お兄ちゃんが止めようとも振り切り、いつもの調子。
「卒業までの生活費の件ですが、慰謝料の代わりに、貴方の年金で賄って下さい」
そんな父親に、実父は低い声で告げた。
母親が首を傾げる中、両者が睨み合う。
「こいつは居候になるんだろ。なのに何で、俺たちがまだ養うんだ」
父親の言葉は、私にも怒りを感じさせた。