My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
act.5
痛みなんてなかった。
一瞬で、感覚を失い。
立てなくなって居た。
「沙亜矢の馬鹿……っ!!」
病院に運ばれた事を知らされた光希ちゃんは、病室に来るなり号泣。
一緒に来てくれた加古さんは、何とか光希ちゃんを落ち着かせようとしてくれてる。
「神経損傷で、左足はもう動かないとか。笑うしかないでしょ?」
「めった刺しにするなんて……仮にもヤツも親でしょ……ッ!!」
光希ちゃんは怒りを隠し切れず、廊下に実子である龍児が居る中で叫んだ。
就職もこれで、取り消し。
実父におんぶに抱っこの生活になってしまう。
1週間したら抜糸して退院。
それからはリハビリをすると先生が言ってた。
歩けるようになれば、杖も車椅子もなく歩けるみたいだけど。
手を借りて生活なんて。
「……ねぇ、沙亜矢ちゃん」
光希ちゃんを落ち着かせた加古さんに声を掛けられ、顔を上げた。
「藤森さんの親父さん、警察には言わないの?」
「…………」
考えてもなかった一言。
警察に突き出したら、どうなるんだろう。
事情聴取があったら、私の事も話さなきゃいけない。
これ以上、もう話したくない。
もう、十分だ。