My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
退院して1週間。
松葉杖で生活してたものの、手のひらに複数の豆が出来てしまい、使わなくなった。
ハイハイや右足でジャンプして歩いたりしながら、毎日を過ごしてる。
左足の筋肉が落ちる中、左足の筋力が増してる。
「沙亜矢、そろそろリハビリ行こうか」
「うん」
リハビリの送り迎えをしてくれる母親。
父親と離婚し、仕事も辞めた。
実家とこのマンションの境(さかえ)にあるアパートを借り、退職金と貯金、午後から個人経営のクリニックのパート代で暮らしてる。
車が藤森の父親の名義だった為、実父が母親に買い与えたらしいNBOXへと乗り込む。
あんなに優しい人と別れた母親は、勿体ない。
ちなみに龍児は、父親と離れて暮らし始めたらしい。
2〜3日に1回は通ってるみたいだし、ここにも来てくれてるけど。
何だか私たち、兄妹に戻ってしまった気がする。
実父に話したとしても、母親にまだ話せてない為に、表立って“龍児”とも呼べないから。
「龍児君の婚約の話、どうなってるか沙亜矢は聞いてる?」
「ううん。特には……」
母親は、お兄ちゃんと年が近いながらも、我が子のように思ってた。
心配して。
応援して――…。
婚約にも賛成してたみたいだし、尚更、話せない。
車の中で、私はずっと窓から見える景色だけを見つめて居た。
顔を見られては、マズい気がした。