My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
act.6
「沙亜矢ー?お父さんもう出るわよ」
「ちょっと待ってよ!」
――今年も暑い夏を迎えた。
母親もマンションへと越して来て2ヶ月。
3人での生活にも慣れた。
私はリハビリの甲斐あってか、まだまだ恢復とは言えないものの、少しは歩けるようになった。
膝の筋が縮んだまま固くなり、歩く時に上手く膝が曲がらないんだ。
座る時は手で膝裏を支えるように持つと曲がるんだけどね。
しかし、父親のお陰もあり、就職が決まってた航空会社で働き始めた。
黒のスーツに身を包み、覚え経てのメイクをして、久しぶりに出勤時間が一緒になった父親の車に便乗して出社。
私は脚の事があり、裏方勤務。
でも、運航管理業務スタッフとして、やり甲斐の持てる仕事をさせて貰ってる。
まだ見習いながら、ディスパッチャーと呼ばれる私の仕事は、パイロットに飛行プランの作成や天候を伝える重要な任務。
3日前、珍しくバンコクのフライトで日帰りフライトだった父親と初めてディスパッチ・ブリーフィングを行った時は、恥ずかしくて顔を見れなかった。
「おはようございまーす」
フライト前の日課であるコーヒーを飲みに行った空港スタッフ専用のカフェへと行った父親と別れてデスクへと向かう。
私たちディパーチャーのデスクは、パイロット専用のフロアーの隅に1列に並んでる。
壁には気象映像のモニターが各国ごとに映し出され、フライトの運行表が貼り出されてる。