My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「クリハラ君だったかな」



「はい;;」



「私の娘を口説く前に、やる事をやらないか」



「すみませんでした!;;」



カラスは深々と頭を下げ、勢い良くその場を去って行く。



「俺の娘って言うのも大変だな」



「いいえ。幸せですよ」



私は父親にニコリと微笑み、デスクチェアーへと腰を下ろした。

そして、次のブリーフィングの準備へと取り掛かる。

午前3便、午後4便と少ない担当ながら、新米の私には難しい。

けど、これから数が増えたら大変。

何かトラブルが起これば、呼び出しが掛かってしまう。

場合によっては、ディスパッチャーの責任になるんだから。



「このルートでは、また揺れる可能性があるのでは?」



トラブルがなくとも、パイロットと言い合いが起こる事もある。



「ですが、今はここを通るしかありません。こちらのルートはまだ規制が解除されてませんから、そこはヨシダ機長の腕次第で揺れは軽減されるでしょう」



「君に操縦桿を握る事がどれだけ大変かわからないだろ!」



「えぇ。車のハンドルしか握れませんね」



私の前のデスクの先輩が現にそうだ。

相手にしてないようだけど、冗談を笑いもせずに言ってる。

こめかみがピクピクしてるのを見る限り、相当苛立ってる。

ヨシダ機長は後半年で定年退職の最年長機長。 

キレても仕方なく、堪えてるのだろう。
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