My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
「最善のプランがダメでしたら、このBルートでフライトされますか?大きな雨雲が発生してるんですけど、いかがでしょうか。ちなみにCルートも同じ状況です。何度言われてもわからないようなので簡単に説明をさせて頂きましたが、まだこのルートは嫌でしょうか。でしたらお好きなルートでフライトして下さい。但し、私たちは責任を負いかねます。どうぞ積乱雲に飲まれて後悔でも何でもして下さい」



「……フッ。さすが長田の子だ。冷静ながら、毒を吐くところがそっくりだ」



「毒ではなく事実です。後は先輩とどうぞお話下さい。私、まだ仕事の途中なので」



私はヨシダ機長に頭を下げて、やりかけの飛行プランの作成を再開。

ヨシダ機長は大人しく、先輩が最初に示した飛行プランでのフライトを行う事にしたらしい。

誰だって、積乱雲に入りたくないだろう。

気流の乱れで少しだけ揺れる方がまだ良い。

区切りを付けて、私はコーヒーを飲みに行く事に。

私たちディスパッチャーは休憩時間は1時間半と決まってるけど、どのように取るかはその人の采配によって決まってる。

私はお昼に40分、後は小まめに4~5分ずつ取る。

まとめてより、小まめにパソコンから離れないと目が疲れるからね。



「沙亜矢。韓国のお土産楽しみにな」



「いってらっしゃいませ」



フライトに出る父親に声を掛けられ、他のスタッフさんの手前、丁寧に頭を下げて見送る。

日帰りフライトが月の半分を占める父親。

食べ物にしてくれないと、また私の部屋にはいらぬ置物が増えて行く。

マトリョーシカが、5体居座るようにね……。




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