My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
確かに最初は怖かった。

けど、龍児は名前をずっと呼んでくれた。

荒々しくなんてしない。

優しかった。

こんなに幸せだと思えるんだと思った。



「龍児、私さ……」



「ん?」



「ここに居たら、ダメかな……」



結婚してと、プロポーズをしたわけじゃない。

行く行くはとは、お互いに思ってるけど。

しかし、やっと一緒に暮らせるようになった父親が、またあのマンションに1人になるようならこんな事は言わなかった。

けど、もう父親も母親も1人じゃない。



「泊まるんだろ?」



「や、そうじゃなくてさ……」



ご飯を食べてる最中に、サラッと言ってしまったせいだろうか。

私の言った事の意味が通じてない龍児。

私は手にしてた箸と茶碗を置き、隣に座る龍児へと身体ごと向いた。



「今までって言うか、藤原のお父さんとの一件以来、私……龍児を出迎えた事なんて、ここに来るまでなかったでしょ?」



「あぁ、そうだな」



いつも公園かどこかで、父親との時間を避けてた。

ふと思い返したように、ビールの缶をジッと見つめる龍児。



「嫌だったら良いの。けど、これから毎日のように龍児を送り出して、お出迎えをしたい。ダメかな?」



そんな彼に、想いを言えてスッキリ。

断られても、ショックだとしてもそれはそれで平気。
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