ボクは桜、キミは唄う
「あ、あ、もしかしてこれ見た?」

柚木君は急にアルバムに挟まっていた1枚のスナップ写真を指差した。

それは卒業式のものらしく、みんなスーツを着ているんだけど、柚木君だけボタンというボタンが外されていた。

よく見ると、ブレザーもワイシャツもワイシャツの袖もボタンがない。

「これはさ、あのー強姦に合って……?違うか」

ポリッと頭をかいた柚木君は

「中学卒業する時は、学ランのボタンは全部楓花にあげるよ」

不器用に私の涙を拭うと言った。

それは、つまり、小学校では私以外のいろんな女の子にボタンを渡したって事で。

「あ、ワイシャツのボタンもいる?」

それだけモテていたって事で。

「袖のも、いる?あれ?違う?」

本当なら私なんか全然手の届かない人なのに。

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